一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

461個のおべんとう

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

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映画『461個のおべんとう』公式サイトより引用

 (2020日本)

愛情はいつも、お弁当が伝えてくれた。

 長年連れ添っていた妻と別れることを決意した鈴本一樹(井ノ原快彦さん/V6)。離婚の際に自分を選んでくれた息子・虹輝(道枝駿佑さん/なにわ男子/関西ジャニーズJr.)が15歳と多感な年頃を迎えていただけに、罪悪感を抱いていた。そんな時、重なるように虹輝が高校受験に失敗してしまう。
 好きな音楽で生計を立てている一樹は、息子に対しても“学校だけがすべてではない。好きなように育ってくれたらそれでいい”と考えていた。しかし、虹輝の出した答えは「高校へ行きたい」だった。

 翌年の春、見事合格した虹輝に、一樹は高校でのお昼ごはんをどうしたいか訊く。「父さんのお弁当がいい」という返答に、笑みがこぼれる。この瞬間「3年間、毎日お弁当を作る!」「3年間、休まず高校へ行く」という“大切な約束”が生まれたのだった。

 人気バンド「Ten 4 The Suns」メンバーの栄太(KREVAさん)と利也(やつい いちろうさん)、マネージャー・徳永(野間口 徹さん)と多忙な日々を送りながらも、毎日おべんとう作りを欠 かさない一樹。そんな中、おべんとうをきっかけにレコーディングスタッフの真香(阿部純子さん)と距離を縮めていく一樹に対し、虹輝は年下の同級生との関係や 高校のマドンナ・礼奈(工藤 遥さん)との初恋が上手くいかない。落ち込む息子に一樹は、「うまくいくと思えば、全部うまくいく」と声をかけるも、ふたりは理解 し合えないまま。さらに父だけでなく、公私ともに順調に歩み始める母・周子(映美くららさん)の姿を目にした虹輝は、自身の将来への不安から、おべんとうを通 じて仲を深めた友人のヒロミ(森 七菜さん)や章雄(若林時英さん)とも言い争いに。ひとりになり何もかもが嫌になった虹輝は、衝動的に家を飛び出してしまう。

 家へ戻った虹輝と再会した一樹は「大丈夫。全部うまくいくよ」と、そっと優しくおべんとうを差し出す。それを、笑顔で受け取る虹輝。おべんとうを開くたびに伝わる想い。ふたりの絆が、少しずつだがしっかりと深まっていく・・・。

お弁当作りの3ヶ条!
 その1 調理の時間は40分以内
 その2 1食にかける値段は300円以内
 その3 おかずは材料から作る

(映画『461個のおべんとう』公式サイト「STORY」より引用)
461obento.jp


 今は亡き父が、生涯一度きり、息子のボクのために作ってくれた弁当が、小学4年生の秋の遠足のときの弁当だった。
 前夜、母が風邪をひいて熱を出して寝込んだらしく、急きょ父が仕込んでくれたものだった。
 季節外れの砂浜に散らばってお弁当を食べるのだが、当時からボクは孤独な子どもで、ひとりで弁当を広げた。
 使い捨ての〝へぎ〟の弁当箱で、半分に白ご飯が詰められ、半分に前夜の〝関東炊き(おでん)〟の残り物のちくわ・カマボコ・丸天の練り物オールスターズが甘塩ょっぱく煮からめてあって、弁当箱を開けたとたん、なんとも言えず、涙があふれたのを今でも思い出す。
 子ども心に、母親が作ってくれなかったことに対する恨みもあったかもしれない。
 職人の武骨な指先で父が急ごしらえでできる弁当なんて、たかが知れてる。
 クラスメイトの華やかな弁当と一緒に、弁当箱を開ける勇気がなかった。
 だけど、ふだん弁当なんか一切作らない父が、ボクのために一所懸命作ってくれたことに、感謝の気持ちもあったと思う。
 情けないような、うれしいような、複雑なキモチが小さな心に去来する。
 海辺の秋風に晒され、ひとり、涙と鼻水で顔をひくつかせながら食べた、あの日のお弁当。
 めっちゃ濃い味付けだったけど、その味わいとともに、忘れられない思い出だ。




 ノスタルジックなキモチはうっちゃっといて。


 くどぅー(工藤遥さん/元モーニング娘。)が出演している!
 って、それだけで期待して観に来たのに、けっこうチョイ役だった(´・ω・`)ショボーン


 なんかさ。予想どおり、ミュージック・ビデオだった^^;

 わざわざ『おべんとうの物語』と断ってる割には、お弁当の印象が薄いのな。
 たっくさん、お弁当、出てくるのよ。数はね。でも、なんか、印象に残らない。
 玉子焼き以外、何が入ってたのか、記憶にない。
 あ、プチトマトはわざわざ『ヘタを取るよう』言われてるので、入ってたんだろな。
 でも、しまいには銅製の玉子焼き器まで使うほどに入れ込んでた玉子焼き以外は、実は多種多様(とは言え、凝ったわっぱ飯用)の弁当箱の数々しか弁当の印象がない。息子がほおばるシーンも、圧倒的に玉子焼きが多かったし。

 あと、せっかく井ノ原さんが一所懸命お弁当を作っているシーン撮ってるのに、見せ方・切り取り方が残念なくらい魅力に乏しいの。
 どういうのか、作るシーンの映像が小刻みで短く、画一的で、出来上がるまでのワクワク感が感じられなかったのね。
 そもそも、あれだけのレシピ、40分で作れるの?
 おかず、材料から作るのに?
 だいたい、最初の弁当からそこそこ見栄え良く、味もおいしく出来すぎてて、なんかしらオヤジの料理自慢みたいで鼻につくなぁ、って風にも思ったのね。
 自分の弁当しか作らないけど、ボクには、無理だな、って思った。いや、話逸れてってるか^^;

 さらに言うと、教室で息子のお弁当を取り囲むように友人たちが机を並べて、口々に美味しいと言いながらオヤジの作ったおかずを摘まむシーンなどで、お弁当のアップから箸でつかむ映像がなく、何を食べて喜んでいるのか分からなかったり、全体的にお弁当を食べる喜びみたいな表情の印象が残らなかった。あったのかもしれないけど、印象薄かった。

 もしかして、この監督は、食の見せ方に興味ないんちゃうか?www

 なんでそんな印象なんかなぁ~って思ったんだけど、きっと、〝お弁当が主役〟じゃなくって、ミュージシャンの〝オヤジが息子のために3年間お弁当を作った事実〟がメインディッシュの物語だから、仕方ないんだろーなぁ。



 じゃあ、親子のドラマを主軸に観たらどうなのかってぇーと、ドラマも時間の流れが分かりづらくて、入学してから息子に特に何かあった印象もなく、気づいたら3年生になってて、「あれ? 2年生すっとばかした?」くらいに迂闊なことに^^;

 まぁ、息子の青春も、わずかに印象にあるんだけど、例えばクラスメイトの森七菜さんの登場が唐突な印象否めなくて、確かに最初っから息子のそばに居たんだろうけど、カメラが割と引いたままだったので、まったくボクの視野には存在してなかったのね。その見せ方、斬新よな^^;

 で、中学浪人した息子の元同級生で、今は1年先輩役の工藤遥さんに気に入られたい一心で、ダイエットをしようとお弁当をこっそり持ち帰って廃棄するとか、離婚して別れた母親の働くカフェに彼女を訪ねていくとか、息子の不安定に揺れ動く心情は描かれてはいるんだけど、間にオヤジのふにゃっとしたゆる~い恋愛模様とか差し込んでくるおかげで、なんか息子に、ぐっと感情移入し切れないの。オヤジの人間関係に比べて、息子の人間関係の描かれ方が、薄っぺらすぎる気がする。

 さらに、福島の実家にオヤジが戻って、老親役の倍賞千恵子さんと姉役の坂井真紀さんが出てくるシーンも、すっごく薄っぺらい。倍賞さんなんか、すっごく大切なこと喋ってるのに、ドラマを深める意思がないのか、短い尺であっという間に画面から消え去ってしまうのは、貧乏性のボクからすると、実にもったいない扱い方。

 ここら見ると、オヤジの人間関係も、ふだんの仕事繋がりがイチバン大切にされてる印象ぬぐえないってなるけど、それでイイのかなぁ?
 「大丈夫。全部うまくいくよ」ってオヤジのセリフ、ボクの心の中では、空しく響いたけどなぁ。
 それって、好きなこと楽しんで生きてるオヤジに対する、ボクのやっかみでしかないのかねぇ。


 結局、この映画で印象に残ったことと言えば、ミュージシャンのオヤジのライブ演奏だけ。
 カッコ良かったよ。確かに。
 楽曲も良かった。確かに。
 だけど……。



 なんだろ~なぁ。このモヤモヤした感じ。

 オヤジ役の井ノ原さんと息子役の道枝さん以外のキャストの使い方が、つじつま合わせみたいで、雑な気がしてならんかった。豪華キャストの無駄遣いと言ったら、言い過ぎかなぁ。
 で、最後はエンディングテーマを親子でデュエットでしょ。
 お弁当映画じゃなくってミュージック・クリップじゃん^^;
 むしろ。
 ライブ映像つないで、間に無音のドラマ部分を短くつないで、ミュージック・クリップにした方が良かったかもなぁ。


 想像だけど、たぶん、原作のエッセイは感動的なんだと思いますよ。

※予告編の方がデキが良かった、なんて映画はままあるとは思うけど……。

映画『461個のおべんとう』予告映像



●監督・脚本:兼重 淳 ●脚本:清水 匡 ●原作:渡辺俊美(エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』/マガジンハウス刊)