宇宙兄弟
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2012日本)
バズ・オルドリンさん(本人)と南波六太(小栗旬さん)が見つめる視線の先で、今まさに月に向かって打ち上げられようとするロケットには、六太の弟・日々人(岡田将生さん)が搭乗していた。弟は幼い頃に兄と交わした約束を守り、宇宙飛行士になっていた。弟との約束をすっかり忘れていた兄は…。
バズ・オルドリンさんは、1969年7月20日、ニール・アームストロングさんに続いて、人類で初めて月面着陸を果たした米国の宇宙飛行士のひとりです。自分で直接は名乗らないものの、自分のことを『かつて月に降り立った者である』と六太に語ったり、彼が腰掛けていたディレクターズ・チェアの背もたれに“BUZZ”の文字が映し出されたりすることから、本人役として登場していたことが分かります。
原作は小山宙哉さんの人気漫画(講談社『モーニング』連載中)で、アニメ版がテレビでも放映されています。
日々人は、宇宙に飛び立つ前に、NASAの宇宙飛行士の伝統にならって遺書を書いていました。それを弟の部屋で見つけて読んだ六太は、いつも明るく軽いノリではしゃぐ弟が、ふだん見せないシリアスな書き振りでしたためたメッセージを受け取り、自分も宇宙飛行士を目指すことを決意します。
月面で死に直面する重大事故に見舞われた弟を心配しながら、JAXAの宇宙飛行士採用試験の最終面接で、『宇宙飛行士として死ぬ覚悟があるか?』と問われた六太の答えにボクは泣かされました。
少年時代から、ボクにとって、宇宙はロマンでも憧れでもなく、限りなく『死』を意識せざるを得ない存在でした。ボクというちっぽけな存在がこの世に存在しようがしまいが、そんなことにはお構いなしで、宇宙が138億光年のかなたから存在しつづけているという事実に、幼い心は深く打ちのめされ、傷ついていたのです。
宇宙という存在の前には、『生きていようが、死んでいようが、大した意味はないんじゃないか…』と、そんなことまで考えて行き詰まり、ただただ泣けてしようがなかったことを思い出します。
しかし。
生きる手段を最後の最後まで考え、行動しようとする者たちが、この映画では描かれています。
今は。
やっぱり、生きていること。
それ自体が、すばらしいと、ココロから思うのです。