一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

サラマンダー(Reign of Fire)

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

サラマンダー [DVD]

 (2002アメリカ/イギリス)

「英雄のいる国は幸福だ、英雄を求めている国は不幸だ」

 ロンドンの地下鉄工事の現場で、太古のドラゴンが目覚めてしまいました。人間を餌食にしながら、ドラゴンは驚くべき速さで増殖します。20年後、無数のドラゴンが天空を蹂躙し、大地を火炎で焼き払い、人類は絶滅の危機に瀕してしまいました。最初のドラゴンを目撃していたクイン(クリスチャン・ベールさん)は、生き残った仲間とともに地下に隠れて暮らしていました。そこにアメリカからドラゴンを倒したことのある男ヴァンザン(マシュー・マコノヒーさん)が義勇軍とともにやってきて、なぜドラゴンと戦わないのか、とヴァンザンたちを挑発します。好むと好まざるとにかかわらず、人間たちは生死をかけたドラゴンとの戦いに挑むのでした…。


 B級の臭いがプンプンするのに、なぜか暗くて重厚な雰囲気を漂わせています。いや、その重苦しい雰囲気のせいで、よけいにストーリーの矛盾が気になります。地下鉄から発見されたドラゴンが唯一のオスで、どうやって繁殖したのでしょう? そもそも、なんでオスのドラゴンが一匹だけだと分かったのでしょう? ヴァンザンたちは、どうやって大西洋を渡ってきたのでしょう? 燃料などの調達はどうしているんでしょう? 人類は最新鋭の軍隊を繰り出して、どうやって殲滅されていったというのでしょう? 人類はまったく歯が立たなかったはず…なのに、ヴァンザンたちの銛みたいな武器やトマホークで、どうしてドラゴンは200匹以上も退治されたのでしょう? いやぁ、気になる気になる…。

 冒頭の言葉は、ヴァンザンが戦わないイギリス人たちを挑発して吐いたセリフです。どうですか? 「おめーら、英雄・アメリカについて来りゃあいいんだ」と聞こえませんか? マッチョなヴァンザンの強引なやり方は、見ていて少々ムネが悪くなりました。クインもヴァンザンの挑発に抗いますが、結局アメリカ人と共闘してドラゴン征伐に行っちゃうんですよねぇ。なんだかなぁ…。ま、最後はマッチョなアメリカ人が討ち死にして、後ろ向きなイギリス人が生き残る、というあたりで、少しバランスをとっているのかも知れませんが…。

 てなことを思って見るとうんざりしますが、ヴァンザンがクインたちの前でドラゴン狩りをして見せたシーンは、テンポもよく、かなり見応えがあります。特に3人のエンジェルたちがスカイダイビングして、ドラゴンにネットをかける映像は、スリリングです。しかし、残念。ドラゴンのCGが、少々物足りない気がしました。

 そして、やっぱり気になった結末。最新鋭の兵器を繰り出して散々蹴散らされた人類が、たった3人で、しかも火炎つきボウガンのみで、最後の戦いを挑むチープさ。いや、それにも増して、たった1匹のオスを倒せば20年に渡るジェノサイドに終止符を打つことができる、なんて、もしかしてお笑い芸人が出てくるクイズ番組で『最後の1問は100万点の問題なので、誰にでも逆転のチャンスがあります』…みたいな展開ではありませんか?

 ま、突っ込みがいのある本作ですが、過剰な期待を持たなければ、そこそこ楽しめるとは思います。あ、それと、邦題の“サラマンダー”ですが、映画の中では一言も出てきません。サラマンダーはファンタジーの世界では“火の精”ということで、実体として描かれるときには、ヒトガタの炎の塊だったり、炎を吐くサンショウウオ(英語でサラマンダー)だったり、とにかく本作のような羽の生えたドラゴンとは似ても似つかない姿しか見たことがありません。ちなみに羽の生えた姿を見て“ワイバーン”だと言う人がいるようですが、ワイバーンは炎を吐かないことになっているので、ボク的には“ドラゴン”で統一させてもらいました。原題は“REIGN OF FIRE”…“炎の支配”とでもなるのでしょうか?

●監督:Rob Bowman ロブ・ボウマン