一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ロボコン

私的評価★★★★★★★★★☆

ロボコン
ロボコン [DVD]

 (2003日本)

 高専の学生たちが、開発したロボットを操作し、フィールド内で段ボール箱を使ったバトルをくり広げるトーナメント方式の大会“高専ロボコン”。テレビスポットだとガチャガチャにぎやかな雰囲気でしたが、本編は、淡々とロボコンの試合が進む中、リアルに熱くなってしまうという佳作です。高専高等専門学校)って全国に62校もあるんですね。クレジットに一気に出てきたので驚きました。


 徳山高専の保健室のベッドで、機械科2年の葉沢里美(長澤まさみさん)は、なにをするにも気が乗らないで、イヤイヤをしていました。そこへ図師先生(鈴木一真さん)の呼び出し、提出したロボットに愛がない、と言われ、1ヶ月の居残り授業を命じられます。取引の末、居残り授業の変わりに第2ロボット部に入って、ロボコンに出場することになりますが、第2ロボット部の面々は、みんな“何か”が足りない、クセ者たちばかりでした。四谷部長(伊藤淳史さん)は、ロボット大好きで研究熱心ですが、自分に自信がありません。設計担当の相田航一(小栗旬さん)は、天才肌ですが、協調性や思いやりが足りません。製作担当の竹内和義(塚本高史さん)は、腕はいいのに、根性が足りません。そんな彼らが、ロボコン中国地区大会で、全国大会の推薦枠出場に選ばれてしまいました…。


 里美が次第にロボコンにハマり、それぞれ“何か”が足りない第2ロボット部男子3人に“やる気”を起こさせる、そんな過程を丁寧に、過剰な演出を一切抜きに、淡々と描いていく演出に感心しました。出演者たちがとてもナチュラルで愛しくて、気持ちいいんです。ストーリーのつなぎ方も分かりやすく、すんなり入っていけます。

 携帯電話、八の字積み破り、三ツ矢サイダー、男子3人が殻を破ってピンチを乗り切るエピソードは、ハッとさせられました。3分間の試合のシーンは、引いたカメラアングルが多用されているので、ドキュメンタリータッチで、見ていると知らず知らずのうちに、熱くなってしまいます。本当に、すごくハラハラドキドキさせられました。勝利がとても純粋に見えました。全然ドラマのヤラセっぽさが感じられないのです。古厩智之監督、すばらしいですね。

 本編には出ませんが、図師先生がロボット好きな理系ヤンキーだったエピソードを物語る写真が、エンドクレジットに映し出されます。詳細は特典映像の未公開シーンで見ることが出来ます。図師先生の目覚ましロボットには、呆れて笑ってしまいました。

 桜舞い散る校庭の片隅、第2ロボット部のプレハブで、里美と航一が交わす短い会話がさわやかなエンディングです。

 最後に、長澤まさみさんは、本作が初めての主演映画だったそうです。昨年は、あのセカチューで第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞するなど、いまや人気と実力を兼ね備えた若手女優というところですが、本作でもとても生き生きと演技されていて好感が持てました。今後ますます期待、でも、売れるといろいろハナについてしまう職業柄、いつまでもさわやかな女優さんでいて欲しい、と願うのは、ボクがオジサンになった証拠でしょうか?

●監督:古厩智之