一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ

私的評価★★★★★★★☆☆☆

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ Blu-ray 特別版

 (2017日本)

 08年に当時女性では最年少の21歳で中原中也賞を受賞するなど「いま最も新しい表現者」として注目される詩人・最果(さいはて)タヒ。現代詩集としては異例の累計31,000部を売り上げた「夜空はいつでも最高密度の青色だ」を、「舟を編む」の石井裕也監督が映画化。都会の片隅で生きづらさを感じながら日々を送る、不器用な若い男女の出会いと心の交流を繊細に見つめた恋愛映画。本作が映画初主演作となる石橋静河池松壮亮のW主演。17年度キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位ほか数々の映画賞を受賞した話題作。

 東京の病院で働く看護師の美香(石橋静河さん)。ある日、バイト先のガールズバーで慎二(池松壮亮さん)と出会う。アパートで一人暮らしの彼は、建設現場で日雇いとして働く日々。バイトが終わった後、渋谷の雑踏の中で慎二と再会する美香。ある日、建築現場で慎二の年上の同僚・智之(松田龍平さん)が倒れ、そのまま帰らぬ人となる。慎二は葬儀場で美香と再び顔を合わせる。そんな思いがけない再会を繰り返す美香と慎二だったが…。 (日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)


 詩が原作?なのか?
 詩をモチーフに、監督がオリジナル脚本書いた、ってこと?
 正直、難しかった、かも。

 大学1年生の秋、当時刊行された〝ラプソディ 白石公子詩集〟をサークルの同級生たちが話題にしていた。
 収録されている〝馬の尻〟を凄く評価していた彼と彼女の会話を部室の傍で聴いていて、読んでみたけど、正直言って、何も分らなかった。ボクには詩の描いている世界がさっぱり見えて来なかった。決して難しい言葉で書かれているワケでもないのに、むしろ、心が受け付けなかった気がした。それは、当時の自分が男女の関係についてオクテだったからかと思った。それから30年ばかり経って、もう一度読み直してみた。けど、やっぱり分らなかった。30年前の同級生たちは、いったい何を読み取り、感動したのだろう。
 詩――詠み人のむき出しの自我に向き合う勇気は、ボクにはない。たぶん。

 最果タヒさんの詩もお目にかかったことはない。が、美香や慎二の独白の中に、おそらく詩の一節が語られてるのだろう。やはり、意味は分らない。分らないなりに、〝生と死〟を強く意識しているような気がした。
 美香が、看護師として働く病院で遭遇する、若い母親の死。
 慎二が、仕事中に目の当たりにした、同僚の智之のあっ気ない急病死。
 美香が、幼い頃経験した、母親の自死。 
 慎二が、同じアパートで懇意にしていた、お隣の部屋の老人の孤独死
 美香の口から連発される〝死ぬハナシ〟――〝どうせ、みんな死ぬ〟〝どうせ、またいつか捨てられる〟と、人間関係をネガティブな捉え方しかできない。いや、不安の裏返しでネガティブに捉えようとしている?
 とにかく、美香、負のオーラ出まくってる。
 なんとも、生きにくそう。
 生きにくいと感じていた時代を通り過ぎてしまったボクには、共感しづらいストーリーだ。
 というか、もう忘れてしまったか、自分。

 この映画に出てくる人たちは、びっくりするくらい、みんなタバコを喫いまくってる。
 この映画に出てくる人たちは、ボクの居場所には暮らしていない人たちばかりだ。
 いや、そう思い込んで生きているだけだ。
 認めたくないだけだ。


 田中哲司さん演じる岩下が、〝ざまあみやがれ〟と吐きながら自分を鼓舞するのが、なんとも愛おしい。
 共感できたのは、彼だけかな。

 雰囲気は好きな映画だけど……難しいな。
 感じたことを、うまく言葉に言い表せない。そんな映画。


●監督・脚本:石井裕也 ●原作:最果タヒ(詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』/リトルモア刊)