妖怪百物語
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(1968日本)
子どものころ、ガメラ目当ての大映映画だったのに、なぜか父に連れられて見たのが本作でした。どうも、ガメラの併映だったみたいです。ガメラの方はさっぱり覚えていないんですけど、本作の印象は強烈に脳裏に刻まれています。当時、4歳か5歳くらいだったはずです。物心つくかつかぬかという年頃ですが、本作に登場する妖怪たちが、相当怖かったんだと思います。
長屋を取り壊して岡場所を造る計画を立てた悪徳商人“但馬屋”が、悪代官のために酒宴を設けました。そこで噺家が余興に百物語を披露しますが、最後のろうそくが消えた後、代官たちがまじないを唱えるのを怠ったため、さまざまな妖怪たちが出現し、悪徳商人や悪代官らを次々と懲らしめ、殺してしまうというお話です。結果的に長屋の住人たちの居場所が守られて、めでたしめでたしなんでしょうけど、ラストで妖怪たちがスローモーションで踊りながら暗闇に消えていく行進がひどく印象的で、一緒にどこかへ連れ去られてしまうのではないかと錯覚して、震えたように思います。
まぁ、今見てもなんとも思いませんが、改めて見直すと、むちゃくちゃ怖かった記憶が蘇るのです。
まず怖かったのが、“置いてけ堀”。「置いてけぇ〜、置いてけぇ〜」というフレーズが耳にこびりついて、夜中にトイレに行けなくなりました。“置いてけ堀”の魚を食べるエピソードは特に子ども心には、理不尽で怖いものでした。
次に怖かったのが、“のっぺらぼう”。振り返るとみんな、“のっぺらぼう”になっている、なんて、最高に怖いじゃないですか。おかげで夜道が歩けなくなりました。歩けても、後ろを振り返れなくなりました。ハーンの“怪談”では、確か“狢(むじな)”のイタズラだと書いてあったように思いますが、本作では、次々と現れる“のっぺらぼう”に、意味不明の怖さを味わいました。
ま、唯一怖くなかったのが、但馬屋のバカボン新吉(ルーキー新一さん)がふすまに墨で描いた“唐傘お化け”がアニメーションで動き始めたかと思うと、実体化して新吉とダラダラと絡むというシーンでした。登場する妖怪の中では、見かけの可愛らしい“油すまし”とこいつだけが怖くなかったので、落書きの好きだった当時のボクは、このふたつの妖怪だけ、ノートに描いていたように記憶しています。
ボクにとっては、子どものころの思い出深い作品です。
●監督:安田公義