MUSA -武士- - 一応、邦画劇場

私的評価★★★★★★★☆☆☆

　（2001韓国／中国）

　ネットで調べてみると、なぜか韓国でも中国でも上映禁止処分を受けている作品なのです。歴史的な背景やストーリーを分かりやすくするため、字幕の追加を当局から要請されたのに、無視して上映したからだそうです。両国とも歴史表現に敏感なお国柄のようです。WOWOWで放映されたのは韓国版の154分より21分短い、133分のインターナショナル版です。

　14世紀後半の高麗末期、中国では元と明の交代期に、高麗で明の使臣が、親元派の一派に殺害される事件が発生します。両国の関係修復のために高麗から明に使節団が派遣されますが、明政府はいきなり彼らをスパイ容疑で流刑にしてしまいました。高麗の使節団は、明の軍によって砂漠の真ん中に連れ出されますが、偶然、元の軍の急襲に遭い、明の武士たちは全滅、幸運にも解放されました。しかし、元の軍の馬車に明王・朱元璋の娘の姫君（チャン・ツィイーさん）が拉致されているのを発見した高麗軍のチェ・ジョン将軍（チュ・ジンモさん）は、姫を元の軍から救出して南京に戻り、使節団の本務を果たそうと決意、見事姫の救出に成功しますが、そこから壮絶な戦いが始まるのでした…。

　えー、史劇はどうしても大作になってしまい、金がかかるものです。総制作費70億ウォンは、どうでしょう？…グラディエーター *1なんか1億ドルもかかってます。俳優のギャラが安いのかなぁ？　まぁグラディエーターは美術やセットにも相当金かかってそうだし、本作の戦争シーンでの軍隊のエキストラの数が断然少ないのも影響あるかとは思いますが、迫力はまったく遜色ない出来ですよ。ハリウッドの金満映画がアホらしく思えてきます。

　いやね、戦争映画は大嫌いなんですよ、ホントはね。本作も見始めてすぐ、砂漠の元の軍と明の軍との戦闘シーンで見るのをやめようかとも思ったんですけど、案外痛くなかったんで、最後まで見てしまいました。ブレイブハート*2やジャンヌ・ダルク *3の方が、似たようなシーンでも痛く感じるのは、痛いシーンのカットが微妙に長いせいかな？　先端恐怖症気味なんで、槍や矢が向かってくるような映像は目が痛くなります。それも大いに影響ありでしょう。ああ、でも、やっぱり、本質的に戦闘シーンは好きじゃあないなぁ…。ワイヤーアクションやCGを使っていないのは、安心感大なのですが…。

　弓の達人で武士たちの指導者的な存在のチン・リプ隊正の役にアン・ソンギさん、奴隷として使節団の正使に随行し、正使の死の間際に奴隷の身分を解放され、華麗な槍術を披露するヨソルの役にチョン・ウソンさんが出演しています。若い女性には圧倒的にチョン・ウソンさんが支持されているようで、韓国でも彼がひとりで映っている本作のポスターの盗難が相次いだそうです。ま、長身で長い槍を操る殺陣は、カッコいいですからね。でも、アン・ソンギさんがこの映画をシメているのは、間違いないです。渋いオヤジです。シルミドも見てみたいですね。あ、パク・ヨンウさん、シュリでは“コネ”で入った頼りない諜報員でしたが、本作でもちょっと調子者で頼りない通訳ジュミョン役で出演してらっしゃいます。こういう頼りなさげな役がハマってるんでしょうか？

　最後に、チャン・ツィイーさんの出演作、不覚にもこれが初見です。本作では、気丈なようでもろい姫君の役を好演してらっしゃいますが、“グリーン・デスティニー”*4、“英雄 ~HERO~*5”、“LOVERS*6”など、最近の彼女はアクション女優のように思われているようです。しかし、彼女はもともとチャン・イーモウ監督の“初恋のきた道 *7”で見出された演技派だと思うので、静的な役柄でじっくり演技を楽しみたい女優さんのような気がしています。

●監督：キム・ソンス

*1: