一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

青いドレスの女(Devil in a Blue Dress)

私的評価★★★★★★★★☆☆

青いドレスの女 [DVD]

 (1995アメリカ)

 1948年のロサンゼルス。黒人差別で工場をリストラされたイージー・ローリンズ(デンゼル・ワシントンさん)は、行きつけの酒場の主人に紹介されたオルブライト(トム・サイズモアさん)という胡散臭い白人男性から、市長選に立候補中のトッド・カーター(テリー・キニーさん)の婚約者のダフネ・モネ(ジェニファー・ビールスさん)という白人女性を捜す仕事を依頼されます。オルブライトに危険な臭いを感じながらも、家のローンが滞っていたイージーは、高額の報酬に惹かれてダフネを捜すことにしました。「ダフネは黒人に興味がある」というオルブライトの言葉を頼りに、イージーはダフネの友人の黒人女性、コレッタ(リサ・ニコル・カーソンさん)と会います。その翌日の夜、イージーは白人の刑事2人に突然逮捕され、3時間もの間痛めつけられながら尋問されました。コレッタが殺されていたのです。刑事たちからなんとか解放されると、次はカーターと市長選を争うテレル(モーリー・チェイキンさん)が接触してきて、ダフネの行方をしきりに聞いてきました。そして深夜、家で眠っていたイージーに、ダフネから直接電話があり、彼は白人専用ホテルに隠れていた彼女に初めて出会います。ダフネは青いドレスをまとって、嫣然と笑みを湛えながら、佇んでいました。イージーは彼女に、マッギーという男から手紙を取り戻したいという依頼を受け、2人は午前4時に白人住宅街のマッギーの家に出かけます。ところが、マッギーの家は家捜しで荒らされており、奥からは彼の死体が…。


 1948年のアメリカという設定が醸す、黒人たちのやるせない感情や、胡散臭い街の雰囲気、画面に被さる気怠いJAZZピアノのメロディ、ちょっと陶酔してしまいそうなハードボイルドの世界ですね。アメリカ映画も、こういった古い時代を舞台にした作品は好きです。

 ジェニファー・ビールスさんが、かなり悪女入ってて、表情や仕草なんか、ヘタに近づいたら心をボロボロに壊されてしまいそうな、そんな危険な魅力が画面から滲み出ていて怖かったです。瞳なんか大きすぎて、ウルウルと涙がこぼれ落ちそうなほど濡れてました。イージーでなくても、男ならたいていゾクッとくるんではないでしょうか?


 初見では、関係者が多すぎて、誰と誰がどういう関係でつながっているのか、うまく理解できませんでした。特に、黒人社会の登場人物たちが、うまく区別つけられなかったのです。今回は4回目くらいかな? そろそろ細部まで関係性が理解できるようになったので、かなりスッキリと見ることができました。しかし、初見でも、概ねストーリーの骨子は理解できるので、じゅうぶん本作のサスペンス性は味わえるはずです。

 ハメットでも触れましたが、ボクが思う“ハードボイルドのお約束”は、本作でも当てはまるようです。すなわち、

  1. 依頼人(オルブライト)はウソをつく。探偵には表面的な事情しか話していない。だから探偵はピンチに陥る。
  2. 行方不明の捜索人(ダフネ)は探偵の元に現れ、探偵に言い訳をする。だけど、やっぱりウソをつく。自分の都合のいいことしか教えないので、またしても探偵はピンチに陥る。
  3. 被害者(コレッタ、マッギー)は加害者だったりする。つまり、ある事件に対し、複数の利害や思惑がからみ、殺し合いが始まる。そこにあるのは正義と悪という構造ではなく、単なる欲望の綱引きである。

 まんま、当てはまってますね。

 ハードボイルドですが、素人探偵のイージーは、かなり情けない“ヘタレ”なところを見せます。しかし、最後はビシッと決めます。いや、悪友のマウス(ドン・チードルさん)に、最後までしてやられるといった方が正しいのかな? ビミョー。でも、“悪友”とは“腐れ縁”のことですから、こういう事件解決もいたし方ないかと。

 何度観てもおもしろい、心地よい雰囲気を持った作品です。

●監督:Carl Franklin カール・フランクリン ●原作:Walter Mosley ウォルター・モズレイ(小説「ブルー・ドレスの女」)