一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ジョゼと虎と魚たち

私的評価★★★★★★★☆☆☆

ジョゼと虎と魚たち 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]

 (2003日本)

 う〜ん、こういう映画は苦手だなぁ…。マジで心が痛みます。いや、フツーに恋愛の楽しいところもズルいところも幸せなところも残酷なところも描いてみせてくれてるんだけど、生々しすぎて、痛むんです。いや、経験値低いもんで…^^;)

 大学4年生の恒夫(妻夫木聡くん)は、雀荘でアルバイトをしていて、10年近く夜明けに乳母車を押して散歩する老婆の噂を耳にしました。マスターの愛犬の散歩を言い付かった恒夫は、散歩の途中で下り坂を暴走する乳母車に遭遇し、中にいたくみ子(池脇千鶴さん)と出逢います。くみ子は足にハンディキャップを負っていて、祖母と人目を避けて乳母車で散歩するのが日課なのでした。あとから追いついてきたくみ子の祖母に付き添い、ふたりの住む家まで乳母車を押した恒夫は、くみ子の作る朝食を御馳走になり、「ダシ巻き、おいしかったっす」とくみ子に声をかけますが、くみ子はぶっきらぼうに「私が作るんだからおいしいに決まってる」と返しました。そんな彼女のことが気になり、恒夫は毎日のように朝食を食べにくみ子の家を訪問するようになりました。


 で、まぁいろいろとあって、くみ子の祖母が亡くなったあと半年余り彼女と同棲して、別れた、というお話です。ああ、そんな書き方をしたら身も蓋もない…ちょっとドラマチックなことといえば、恋愛の対象が、身体障碍者であった、というだけです。ああ、それと、祖母が拾ってくる本の中からフランソワーズ・サガンの小説の主人公ジョゼが気に入り、恒夫に自分のことをジョゼと呼ばせていたことでしょうか?

 冒頭に、ふたりの初めての旅行の思い出の写真(映像)を並べて、恒夫の独白で始める手法は引き込まれました。「えっ?ふたりはどうなったんだろう?」って、のっけから気になって見てしまいました。池脇千鶴さんの役どころは、障碍を持つ女性のデリカシーを感じさせて、ドキドキさせられました。初めて目にするモノに対する驚き方だけ、ちょっとワザとらしくて力みすぎかなぁ(難しい演技だろうけどね)とは思いましたが、その他はいい感じでした。妻夫木聡くんの役どころは…う〜ん、これが生々しすぎるんだよなぁ…生々しすぎて、ついついいろいろ考えてしまうのです。女にルーズなズルい男でもあり、恋愛に純粋な男でもあり、障碍を持つ彼女に対して、最後には降りてしまう正直で弱い男でもあり、それをサラッと切り替えれずに道端で泣き崩れてしまう情けなくもセンチメンタルな男であり…いやぁ、生々しすぎ…決して共感はしないけれど、心、痛みます。

 PG-12です。濡れ場、複数あります。ああ、そうか。雰囲気はピンク映画なんだ。だからせつないのかな? ボクはピンク映画は嫌いではないです。むしろ、ストーリー的には金のかかってる一般映画よりずっと良作が多いと思ってます。しかし、のっけから妻夫木くんの濡れ場には度肝抜かれました。サラッとした濡れ場だったんですけどね。大学の同級生で恋人(?)役の上野樹里さんとのキスシーンはぎごちなかったけど、池脇さんとのラブシーンは、激しいキスでまたまた度肝抜かれてしまいました。ところで、どうして裸になって濡れ場を演じると、「体当たりの演技」と言われるんでしょうね? どこに体当たりしてんの?

 最後には別れてしまうんですけど、くみ子は「ずっと一緒にいよう」と抱きしめてくれた恒夫の言葉の儚さを知ってたんですね。とてもあっさりした別れでした。恒夫は失ったモノに対するせつなさに泣き崩れてしまったけれど、くみ子は電動式車椅子を颯爽と走らせて、淡々とひとり暮らしの生活を送る、そんなシーンで終わるところがカラッとしていて、変に涙を誘わないのも生々しかったりします。

 恋愛映画としては傑作なのかも知れません。しかし、恋愛映画はボクには重過ぎます。

●監督:犬童一心 ●原作:田辺聖子(小説「ジョゼと虎と魚たち」)