一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

まともじゃないのは君も一緒

私的評価★★★★★★★★★★

f:id:vgaia:20210323224922j:plain
映画『まともじゃないのは君も一緒』公式サイトより引用

 (2021日本)

普通(まとも)な恋愛って、なに?
 外見は良いが、数学一筋で〈コミュニケーション能力ゼロ〉の予備校講師・大野(成田 凌さん)。
 彼は普通の結婚を夢見るが、普通がなんだかわからない。​
 その前に現れたのが、自分は恋愛上級者と思い込む、実は〈恋愛経験ゼロ〉の香住(清原果耶さん)。​
 全く気が合わない二人だったが、共通点はどちらも恋愛力ゼロで、どこか普通じゃない、というところ。​
 そして香住は普通の恋愛に憧れる大野に「もうちょっと普通に会話できたらモテるよ」と、​あれやこれやと恋愛指南をすることに。​​

 香住の思いつきのアドバイスを、大野は信じて行動する。香住はその姿に、ある作戦を思いつく。​
 大野を利用して、憧れの存在である宮本(小泉孝太郎さん)の婚約者・美奈子(泉 里香さん)にアプローチさせ、破局させようというのだ。​

 絶対にうまくいくはずがないと思っていたが、​予想に反して、少しずつ成長し普通の会話ができるようになっていく大野の姿に、不思議な感情を抱く香住。
 ある時、マイペースにことを進める大野と衝突した香住は「もうやめよう」と言い出す。
 すると大野は「今変わらないと、一生変われない。僕には君が必要なんだ!」と香住に素直な気持ちを伝える。​

 初めて誰かに必要とされた香住は、そんな大野の言葉に驚き、何か心に響くものがあり、​初めての感情に「これって何!?」と悩み始める。
 二人の心がかすかに揺らぎ始めた時、事態は思わぬ方向へと動き出す。二人が見つけた《普通》の答えとは?​

(映画『まともじゃないのは君も一緒』公式サイト「STORY」より引用)
matokimi.jp



 もう、ね。劇場内で無意識のうちに、ついつい声出してツッコんだり、恥ずかしげもなく声出して笑ったり。これ、大傑作だわ!

 『〝普通〟を問い続ける映画』、とか、正直どーでもイイです。
 いや、ボクが普通の枠から微妙にはみ出してる人間だからかも知れませんが、大野も香住も、さほど普通じゃないワケでもない気がした、というか、今はこういう〝経験値の低い状況〟に戸惑ってるのが〝普通〟ではないんですかね?
 ボクはそんな感覚なんで、これ観たお客さんの多くが、素で笑ってしまってると思ったんですけど、違うんでしょうか?


 〈恋愛経験ゼロ〉のくせに脳内では『自分は恋愛上級者に違いない』と思い込んでる、あたかも中二病発症中みたいな女子高生・香住の思考と行動とその結果は、もうどう転んでもわかりみしかないワケなんですけど、そこがとにかくツボりました。

 憧れの青年実業家・宮本に接近しようと講演会の裏手の喫煙所で待ち伏せする香住。ファンレターを渡すと、そこに秘書然とした彼の恋人・美奈子が登場し、どうやら二人は結婚を前提とした関係であるらしいと分かります。呆然としながらその場を後にした香住は、翌日予備校で大野と雑談する中で、「本気で〝普通の恋愛〟をできるようになって、ゆくゆくは結婚したい」という願望を全力で訴えかけてくる大野を利用して、宮本と美奈子を破局させようと企みます。

 すでにこの時点で「は?」なんですよね。
 美奈子と破局したら宮本は自分と付き合ってくれる、ぐらいに短絡的に思い込んでるんでしょうか?
 ここら辺から、香住の〝微妙に普通じゃない〟思考と行動が始まりますが、ここで感じた微妙な違和感が、すでにこの作品の魅力に憑りつかれ始めてる証かとwww


 一方の大野は、というと、笑いのツボが微妙に人とずれてる上に、絶妙にキモい引き笑いで攻めてくれるので、もうたまりません。めっちゃあの笑い方、好きです^^

 なんか学問一途だったように振る舞ってはいるんですが、要は『自分が興味を持てない人とは関わりたくないだけ』という考え方を貫いた結果、周りにちゃんと自分の話を聞いてくれる人がいなくなっていた、という感じの大人です。

 ちゃんと会話をして来なかった分、他人との考え方・感じ方の違いをちゃんと把握していないせいで、特に〝建前〟でその場限りみたいなたわいもない話をするような〝あいまいな〟会話が苦手なんでしょうね。
 お店で勧められたお皿について、何も考えを持ち合わせてないから、トンチンカンな言葉でしか返せない、とか、興味のない女性と急に食事をするよう仕向けられても、興味が無いから相手の話に乗っかれない、とか…etc.

 それが、なぜか美奈子とはやけに馬が合ったのか、本来苦手な中身のあいまいな会話でも、スラスラと大人の対応でやり過ごせてしまい、それどころか、「次も会えますか?」なんて自然に振ってみたりしたから、香住としてはシテヤッタリのはずが……。


 なんかね。大野と美奈子が次第に惹かれ合うようなイイ感じになっていく〝昼メロ的な危うさ〟が、凄いドキドキさせてくれてね。それに対する香住の反応が一筋縄でいかないこじらせ方してて、もうこの後の展開は笑い声を理性で抑える余裕なくなるくらい面白可笑しくて、久々に胸がすくほど笑かしてもらいましたわ^^



【 ここから若干ネタバレあります。 】


 そして最後は…「あぁ、大野って、そうやったんかぁ~」って分かり、「大野のキャラがそんなカンジだから、あり得るハナシよね」ってナットクしたら、すっごい心ハレバレ、ハッピーな気分になること請け合いwww

 香住と一緒に、心穏やかならぬ〝初恋気分〟を味わいながら、予測不能な大野と美奈子の恋愛模様に振り回されたらいかがでしょう?


●監督:前⽥弘⼆ ●脚本:高田 亮 ●音楽:関口シンゴ