一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

インストール

私的評価★★★★★★★☆☆☆

上戸彩 in インストール [DVD]

 (2004日本)

 高校生の野沢朝子(上戸彩さん)は、ある日早退すると、深夜部屋中の荷物を一切合財粗大ゴミに出してしまいました。“平均そこそこ”で過ごす毎日に脱力してしまい、学校へ行くことからもドロップアウトしてしまった朝子は、彼女が捨てたMACを拾った小学生・青木かずよし(神木隆之介さん)と再会し、彼がOSをインストールし直したMACで、一緒に「人妻風俗嬢のエロチャットの代役」というアルバイトをすることになります。


 ま、ありふれた高校生の女の子とませた小学生の男の子の、再生の物語と言ってしまえば身も蓋もないワケですが、けっこう微妙なんですよね。全体的にはコメディタッチで笑えるんです。でも、オッサンであるボクには、朝子の心情を理解するのは、無理があるのかもしれないなぁ、と、そんな溜息が漏れてしまうのです。なんなんだろ、この感じ。17歳に対する眩しさ、羨望、嫉妬、そんな感情がない交ぜになった感じ…結局、もう失ってしまった輝きを取り戻せないもどかしさ、とでもいうのかな。複雑です。

 でもね、いろいろと共感するところは多いんですよ。チャットをしていて、バーチャルの世界から不意に現実の世界に戻っていく人がいる、とか。特に、「闇の部分を知ることによって、漠然と怖かったモノが減って、世の中が浅く狭くなっていく」とかずよしが滔々とエロ哲学語るくだりは、かなり的を射ているなぁ、と感心させられます。オッサンくらいの歳になると、世の中浅く見えてしょうがなくなるモンだけど、それだけ経験してきたってことなんでしょうかねぇ…大した経験じゃないけど…しみじみ…。

 上戸さんと神木くんの掛け合いは見事です。ふたりとも、困ったことにうまい役者さんなんですよね。まだまだ若いのに…これから先が困るよなぁ、きっと…いらん、心配か。上戸さんのチャット中の妄想なんか、むちゃくちゃうま過ぎ。演技って気がしなかったです。

 朝子の脱力の原因が、ただ単に漠然とした「まだ17歳、もう17歳」という焦りだとか、「このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれない」という不安だとかに起因するのだったら、なんとなく良い気がしてたんですけど、大切なものを失っていた、という決定的な要因があったというくだりは、急に陳腐なストーリーになった気がして、ちょっと残念でした。設定がおもしろかっただけに、ね。

 あと、余談ですが、Color Classic-IIでMAC OS 9.1インストールしてNetscape7でネットサーフィンするって設定は、きついですね。MAC OS 9以降がインストール可能かどうかも怪しいですが、Netscape7は重すぎて動かんと思います。出てくるパソコンやけにMACが多かったけど、ボクも新しいMAC欲しいなぁ、なんてね。

●監督:片岡K ●原作:綿矢りさ(小説「インストール」)