森崎書店の日々
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2010日本)
人生、無駄なことなんてない。
どこからでも始めよう。
失恋の痛手から会社を辞め、ひたすら眠って毎日をやり過ごしていた貴子(菊池亜希子さん)は、神保町で古書専門の森崎書店を経営する叔父のサトル(内藤剛志さん)に誘われ、小さな書店の2階で暮らし始める。ふさぎ込みがちな自分を何くれとなく気遣い励ましてくれるサトルやユニークな常連客(岩松了さん)、近所の喫茶店で働くトモコ(田中麗奈さん)らと触れ合ううちに、生まれて初めて貴子は本の世界に引き込まれてゆく。そして、最低最悪の失恋に決着をつける時がやってくる。(DVDパッケージから引用)
なんと言うか。ゆるい。
店の2階の貴子の部屋とか、さまざまなシーンで、神保町界隈を走行する車の音がひっきりなしに、そこそこのボリュームで聞こえてくる。
そのせいか、特に屋外でSEとセリフの音量バランスが悪く、会話が聞き取りづらいシーンが多々ある。
収録されている予告編は、セリフがONマイクで入ってるカンジなので、たぶん、わざと狙ってのことだと思う。
決して悪いワケじゃないけど、肝心なときにセリフを聞き取れなくて、もどかしさを覚えるのは残念だとも思う。
というか、そもそも一般的な作品に比べて、全体的にかなり音量が小さいと思う。
さながら。神保町古書店街のドキュメンタリーのよう。
古書店が舞台のせいか、照明を抑えていて、全体に屋外から差し込む自然光を生かした映像が多い。
古書店の店内、貴子の部屋のスタンド、サトルの行きつけの喫茶店、いずれも照明が電球色で、温かみを演出している印象。
貴子が、初めて神保町に降り立って、森崎書店を探すくだり。
シャッターを開けて開店準備する古書店街の朝の光景。
貴子が雨の日に古書店めぐりをするくだり。
通りを埋め尽くすほど居並ぶ神田古本まつりの光景。
俳優さんたちがセリフをしゃべってるシーンですら、引きの固定カメラの映像が多用されている。
やっぱり。神保町古書店街のドキュメンタリーのよう。
肝心のストーリーは……。
なんか、一度でも立ち止まったことのある方なら、共感できると思うんだけど、バリバリ人生を切り拓いて突っ走ってるような方には、寝言のような映画だと思う。
主人公の菊池さんは、決して演技はうまくない。むしろ、素人が、頑張って演技をしてみました的な痛々しさを感じるシーンもあった。
それでも、繊細で、ちょっと難しい役柄の主人公を、一所懸命に演じていたのは、決して悪い印象ではない。
主人公の心の揺らぎが、原因はともかく、ボクには痛いほど分かる……と、思った。
脇のみなさんのステキな演技もあって、静かに読書を楽しむような、穏やかな空気感を楽しめた。
ゆるやかに流れる古書店街の時間を楽しいと感じられるなら、良い作品だろう。