一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ハメット(Hammet)

私的評価★★★★★★★★☆☆

ハメット [DVD]

 (1982アメリカ)

 1928年、禁酒法時代のサンフランシスコのアパートの一室で、締め切りの迫っていた短編小説をタイプで打ち終わったダシール・ハメットフレデリック・フォレストさん)の元に、探偵社時代の同僚のジミー・ライアン(ピーター・ボイルさん)が訪ねてきました。中国娘のクリスタル・リン(リディア・レイさん)を捜しているので、チャイナタウンを案内して欲しいというのです。外に出たふたりは、黒づくめの男が尾行していることに気付き、チャイナタウンで撒こうとしますが失敗し、ハメットは郵送するはずだった原稿を紛失してしまいました。ライアンともはぐれたハメットに、新聞記者のソルトと名乗る男が近づいてき、「クリスタルの件でライアンに話をしている」と告げられますが、酒場で目を離した隙にソルトも消えてしまいます。チャイナタウンからアパートに戻ろうとしたところで、ハメットは知り合いのオマラ警部から「中国娘にはかかわるな」と忠告を受けました。翌朝短編の打ち直しをしていたハメットに、ライアンから謎めいた電話がかかります。太い辞書を開け、と。そこには、自殺した材木王・カラハンの記事がはさんでありました。調べていくと、クリスタルはチャイナタウンの大物フォンに5000ドルで買われ、客をとるようになり、カラハンが亡くなった日に失踪していたことが分かります。死体安置所でカラハンのことを調べ、ハメットがアパートに戻ってくると、そこにはクリスタルが待っていました。彼女は、カラハンが妻に殺されるのを目撃したので逃げていると言います。ハメットは彼女をアパートに残し、フォンのカジノに乗り込みますが、クリスタルを捜していたフォンに打ちのめされ、監禁されてしまいました。フォンの元にはライアンも監禁されており、ふたりで脱走しますが、フォンの屋敷を出たところで、オマラ警部たちに見つかり、ふたりとも警察へ連行されます。ハメットは死体安置所に連れて行かれ、そこで顔をつぶされたクリスタルの死体と面会することになりました。そして事件は、サンフランシスコの大物たちを巻き込んだスキャンダルへと発展していきます。


 ハードボイルドの祖とも言われるダシール・ハメットが、ピンカートン探偵社から作家に転身したころに巻き込まれた事件という設定です。禁酒法時代なのに、酒はいたるところで手に入り、登場人物は始終酒とタバコにまみれています。サックスとピアノのけだるいBGMで雰囲気も上々、しかし、いかんせん。ハードボイルドは主人公だけが分かっていて、読者・視聴者には分からないことだらけでお話が進んでいきます。ストーリーはなかなかストレートに理解できないのです。ま、しかし、ハードボイルドの流儀で行くと、いくばくかのお約束があるので、その辺を知った上で見ると、なんとか助けになるかもしれません。

  1. 依頼人はウソをつく。探偵には表面的な事情しか話していない。だから探偵はピンチに陥る。
  2. 行方不明の捜索人は探偵の元に現れ、探偵に言い訳をする。だけど、やっぱりウソをつく。自分の都合のいいことしか教えないので、またしても探偵はピンチに陥る。
  3. 被害者は加害者だったりする。つまり、ある事件に対し、複数の利害や思惑がからみ、殺し合いが始まる。そこにあるのは正義と悪という構造ではなく、単なる欲望の綱引きである。

 ボクが思うのはこんなとこかな? 案の定、このあと、ストーリーは大転回します。ライアンの依頼主は誰だったのか? クリスタルの失踪の本当の理由はなんだったのか? カラハンの自殺の真相は? ネタバレになるので、これ以上は書きません。

 1時間37分、濃密なハードボイルドに酔います。カッコいいです。

●監督:Wim Wenders ヴィム・ヴェンダース