一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

アルバイト探偵(アイ)~100万人の標的~

私的評価★★★★★★★★★★

アルバイト探偵~100万人の標的~
アルバイト探偵~100万人の標的~デラックス版 [DVD]

 (2005日本)

 高校3年生の冴木リュウ石田卓也さん)は、受験勉強を放ったらかして、父で内閣情報調査室OBの私立探偵、冴木涼介(椎名桔平さん)の仕事を手伝う、アルバイト探偵でした。ある日冴木探偵事務所に、父の元同僚で親友の島津(松重豊さん)が訪れ、ある調査の依頼をしてきました。六本木の廃ビルを取り壊した跡から出た白骨死体が、東京で姿を消していた謎の武器商人モーリスのものであり、彼の死体と一緒に謎の鍵が発見されたこと、そして、その鍵が何の鍵なのかを探ることを依頼してきたのです。冴木は、モーリスが亡くなる前に東京に小型核爆弾を持ち込んでいた可能性が高く、その鍵が隠し場所に関係あるのではないかとにらみますが、調査を断りました。それに飛びついたリュウは、国家権力を代表する島津に、東大入学という報酬と引き換えに調査を引き受けることを宣言、早速廃ビルの唯一の関係者である梅本(國村隼さん)の経営するクラブに潜入します。そしてリョウは、若い客が踊るフロアで飛び切りのいい女、モニーク(土屋アンナさん)に一目惚れ、彼女をナンパしますが、実は彼女は梅本が世話をしている男の娘だったのです。


 WOWOWで昨年11月に放映されたオリジナルTVムービーです。

 大沢在昌さんの本は1冊も読んだことありませんが、面白いお話でした。事件の関係者たちの思惑が探偵の周りを入り乱れ、謎の集団に襲撃を受けたり、謎の女が登場したり、ハードボイルドの重要な要素である複雑な人間関係の面白さが十分堪能できます。また、高校生(と思えないような少年だが…)が主役という設定の軽さが、血生臭い事件の連発にもかかわらず、どこかしら観賞後にさわやかな印象を与えてくれ、見終わったあとにスッキリ感がありました。

 ストーリーのテンポの良さ、そして、ハードボイルドは先に書いたように、謎の関係者が次から次へと登場するため、人間関係の整理が面倒臭いことがままあるのですが、その辺りを過不足なく知らせるシナリオの組み立ての周到さ、ストーリーの合間合間に挿入される涼介とリュウ、あるいはモニークを交えたメンバーのしゃれた会話など、見ていてどの場面もワクワクするような期待感がいっぱい仕込まれています。また、敵のアジトへの潜入のシーンなどで見せる心臓が高鳴るようなドキドキ感もかなりイイ感じです。

 アルバイト探偵リュウが、父親にべったりでないところがとてもイイお話になってますし、涼介のカッコよさも随所に引き出されていて、親子探偵どっちが欠けてもこのストーリーが成り立たないように、ちゃんと組み立てられているのは感心させられますね。特に、椎名桔平さん、カッコよかったぁ〜。男が憧れるような役柄でしたねぇ。

 リュウとモニークの恋の顛末も、さわやかでほろ苦くて、とてもよかったです。土屋アンナさんが、フツーにキレイでした(爆…だって、CMとか映画とか、素を台無しにするようなド派手メイクで暴れまわってる印象が強いんだモノ…)。

 リュウがバイクで疾走する東京の夜景が、随分キレイに見えました。舞台に使われた街の雰囲気も、日本のハードボイルド映画にしては、かなりシャレてる感じがしました(まったく、ボクなんかが足を踏み入れるような場所ではありませんでしたがね)。クラブの中でリュウが逃げ回るシーンの映像とか、ぐいぐい見る者を引き込んでいくようなヒップホップ系のBGMとか、崔監督、こんな若手が好みそうなジャンルでもきっちり仕事してます。恐れ入りました。カッコいい映画になってました。

 ちょっと甘い気もしますが、★10個いっときます。こういったジャンルの邦画の中では、満足度高かったです。

●監督:崔洋一 ●原作:大沢在昌(小説「帰ってきたアルバイト探偵」)