一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

泥棒成金(To Catch a Thief)

私的評価★★★★★★★★☆☆

泥棒成金 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 (1954アメリカ)

 第ニ次世界大戦前、宝石泥棒キャットとして名を馳せたジョン・ロビー(ケイリー・グラントさん)は、大戦後足を洗ってフランスのリビエラ郊外で悠々自適の生活を送っていました。そこへ、キャットの手口をマネた宝石盗難事件が続発し、ロビーを疑った警察が、仮釈放中の彼の屋敷を訪れます。ロビーはまんまと警察の追っ手を振り切り、大戦中に在籍したレジスタンス仲間のいる海岸のレストランに逃げ込み、濡れ衣を晴らすため、にせキャットを自分の手で捕まえることを宣言します。店で仕入れた情報から、ロビーは保険会社のヒューソン(ジョン・ウィリアムスさん)とコンタクトをとり、宝石に保険をかけている大金持ちのリストを入手しました。そして、次に被害に遭いそうな候補者として、アメリカ人の石油成金スティーブンス夫人に近づきます。ところが、その娘のフランシー(グレイス・ケリーさん)がロビーの正体に興味を持ち、逆に彼につきまとうことになったのです。フランシーの車でふたりがドライブしたところで、彼女がロビーの正体に気づいていたことが知れますが、彼女は今新聞をにぎわしている宝石盗難事件が、彼の仕業であると信じきっており、今まで出会ったことのないタイプの男として、高揚してる様子でした。しかし、その夜、スティーブンス夫人の宝石が盗まれてしまい、激昂したフランシーは、ロビーが盗んだと決めつけ、彼のことを警察に通報したのです。


 冒頭の警察を振り切るアイディアは、単純なんだけど、ちょっと騙されましたね。楽しかったです。ヒッチコック作品としては、サスペンス性が低いのでしょうが、ボクは十分楽しめました。もちろん、ヒッチコック監督らしいサスペンスの盛り上げ方も取り入れてあるのですが、メインはジョンとフランシーの“恋のかけひき”なんではないかと。しゃれの利いたフランシーの最後のセリフ、それを耳にして、抱き寄せた彼女の顔から片目だけ画面に覗かせて驚いて見せる、なんとも言えないジョンの表情、小粋なハッピーエンドってとこでしょうかね? こういう映画は大好きです。

 ロケーションを行った南仏の風景もとても美しく、ロマンチックな演出に一役買ってます。何度かあるカーチェイスでは、ヘリコプターからの空撮までやっています。今では当たり前の撮影手段ですけど、50年代半ばでは珍しいのではないでしょうかね?

 メイキングを見ていると、本編で首を傾げたくなったシーンのいくつかが、当時の映倫の審査を通すため、工夫した結果だったことが分かります。キス・シーンや、カジノでジョンがご婦人のドレスの胸元にチップを落としてしまうシーンなど、ちょっとエッチ(?)なシーンで、カメラをパッと引いて見せたり、BGMをファニーな感じにしたり、花火の映像と交互に映して見せたり、といった感じです。あんまり意識してないですが、今でもアメリカの倫理規定は厳しいらしく、日本ではふつうに無指定で見られる有名な作品の数々が、本国ではPG指定で子どもだけでは見てはいけなかったりするようです。

 それにしても、主演のグレイス・ケリーさんは、美しいです。出演作が少ないので、よけいに心惹かれるのでしょうけど、とても品のある美しさを感じますよね。もう、彼女の美しさを見ることができる、それだけでもこの作品は、ボクには十分価値が感じられます。

●監督:Alfred Hitchcock アルフレッド・ヒッチコック