一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ジュブナイル

私的評価★★★★★★★★★☆

ジュブナイル [DVD]

 (2000日本)

 ぼくたちは、その夏がどんなに重要になるかなんて、思っても見なかった…

 2000年夏、町内会の林間学校に来ていた坂本祐介(遠藤雄弥くん)・木下岬(鈴木杏さん)・松岡俊也(YUKIくん)・大野秀隆(清水京太郎くん)の4人は、森の中に落ちた閃光のあとに駆けつけ、そこでバスケットボールほどの大きさの球形の小型ロボット、テトラと遭遇します。ロボット好きの祐介に引き取られたテトラは、彼の部屋の押入れの中で、金属パーツを組み合わせてボディを強化すると、次に町の古びた電気店でタイムマシーンの研究をしている天才物理学者・神崎宗一郎(香取慎吾くん)のパソコンを借り、インターネットから膨大な知識を吸収し始めました。そのころ、地球の上空10万キロに巨大な宇宙船の一団が接近しており、太平洋上にも一辺が6キロもある巨大な三角錐が出現していました。そして、祐介たちの街にも、一晩中電気屋の店先でテレビを見ている謎の女の姿が目撃されるようになっていたのです。やがて謎の女の正体が、惑星改造のために地球から海を奪いに来たボイド星人であり、彼らが自分たちの計画実行の邪魔になるテトラを探していることが分かりました。ボイド星人は岬を誘拐し、祐介たちにテトラと交換することを要求してきました。祐介たちは、岬を、そして地球を救えるのでしょうか!?


 公開当時は、ビジュアル・エフェクトの専門だった山崎貴さんの初監督作品ということで、ハリウッド映画並みのVFXを駆使したSFファンタジーとして大々的に宣伝されました。確かに特撮のできばえは、スターウォーズにも引けをとらないといえるほど、よくできていると思います。しかし、本作は、実は特撮以外のドラマ部分が、とてもステキなんです。林間学校の草原や森の様子、港町の祐介たちの生活空間、神崎ラジオ店の味わい深い佇まい、そのどれもが美しい映像で描かれているのです。そして、なにより特筆すべきは、タイトルどおりの“ジュブナイル(少年期の〜)”すなわち、4人の子どもたちの、屈託のない生き生きとした夏休みの過ごし方が、見ていて本当に「ああ、なんかイイよな。子どものころの夏休みって、何があるか分かんないけど、ワクワクしたよな」という共感を呼び覚ますのです。

 こうして、4人の子どもたちのドラマを丁寧に描いて見せるからこそ、すばらしい特撮も違和感なくピタッと収まって見えるのではないか、そんな気がします。そうなんです。特撮部分とドラマ部分のつなぎに、まったく違和感を感じさせないのです。だから、ファンタジーの部分にもすんなり素直にのめり込み、興奮してしまっていたのです。実写でこういう映画ができるなんて、ちょっと感動ですよね。ハリウッド映画なんかより、だんぜんスキですよ。

 エンドクレジットに“for Mr.Fujiko・F・Fujio”って出てるんです。なんでか、ってぇのは、作品を見た方には「ああ、なるほどね」と分かるかな? ま、ひとつ言えるのは、蛇足なんじゃないかと危惧したラストの2020年のエピソードまでも、とってもステキな仕上がりだったということです。ちょっと泣けましたよ。心がピュアになる、そんなステキなファンタジーです。山下達郎さんのテーマ曲も胸にしみてイイですよね。

 あだしごとです。2020年の岬役の緒川たまきさん、どっかで見たことあると思ったら、ガセビアの沼で「うそつき」って言ってくれるお姉さんでした。キレイな方です。でも、一番この映画で輝いて見えたのは、撮影当時小学6年生だった鈴木杏ちゃんでしょう。彼女の笑顔は画面からこぼれそうなほど、とっても自然で可愛かったです。

●監督:山崎貴