一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

雨鱒の川

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

雨鱒の川 ファースト・ラブ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 (2004日本)

 北海道の大自然の中で母と暮す少年・心平(須賀健太さん)は、耳の不自由な少女・小百合(志田未来さん)とは、なぜかお互いに心を通わすことができました。いつも仲良く雨鱒の泳ぐ川で遊んでいたふたりを、英蔵という少年が見つめていました。英蔵は小百合に心を寄せ、小百合の気をひこうとしていましたが、心平のように思いどおりに心を通わせることができませんでした。やがて大人になった心平(玉木宏さん)は、幼いころから認められていた絵の才能を生かすため、小百合(綾瀬はるかさん)の父(阿部寛さん)の紹介で東京の画廊の世話になることになりました。そして東京に出てまもなく、新作を描けずに悩んでいた心平の元に小百合の祖母(星由里子さん)から「小百合が英蔵(松岡俊介さん)と結婚する」という手紙が届きます。


 さて、北海道の大自然の映像はとてもステキなんでありました。が、CGうざぁ〜い!! いきなり少女・小百合が登場するシーンで、小鳥が2羽少女の周りを飛び交う映像が飛び込んできて、ジャマ臭いCGだなぁ〜と思っていたら、川面に映る不自然に明瞭な花火、そして極めつけはタイトルになっている雨鱒の姿のほとんどがCGで出てくる、もう満腹です。せっかく美しい自然の美を映しておきながら、明らかにそれと分かる人工的な作り物を重ね合わせるなんて、無粋です。雨鱒は、直接画にしない、という手法もあったんじゃないかと思うのですが…たとえば水の撥ねる音だとか、はじける水しぶきだとか、心平の動きだとか、そういったものであたかもそこに雨鱒が存在していることを匂わせる方が、はるかに印象的だったんじゃないかと思うのです。CGで許せたのは、心平の夢の中の画だけでしたね。

 いろんなレビューを拝見すると、子役の演技がクサいと思われる方もいるようですが、ボクは好感持てました。心平少年の大らかな雰囲気がとても好きでした。母親役の中谷美紀さんとの心温まる交流が微笑ましく、また小百合の祖母や、川釣りをする老人(柄本明さん)たちにホントに可愛がられているな、という感じがとてもよく画面に出ていたと思います。

 むしろ、この映画は大人になった心平が、あまり描けていなかったような気がして、少々物足りなさを覚えました。新作が描けない苦悩とか、そのあたりがけっこう素っ気無かったりして、東京に出てきて北海道に戻るまでの間をもうちょっと丁寧に描いてくれてもよかったんじゃないかと、そんな気がします。実はそのへんを、少年時代の回想を多用することで、推して知るべし、と言いたかったのかもしれませんが、それにしては少年時代のエピソードでは、今の心平の心情を推し量るのは難しかったと思いました。このへんは、2回目に見たときには、印象変わるかも知れませんけどね。

 ネタバレになります。いろんなレビューで触れられている筏の件、まぁ、ええんと違う?とボクは許せました。この映画に平凡な常識で突っ込んじゃあダメですよ。純愛映画は、つまるところファンタジーなんだから。

 出演者について少々。心平少年役の須賀健太さん。“ゴジラ FINAL WARS”でマタギ泉谷しげるさんとミニラを連れて軽トラに乗ってた少年の役で見ました。上手とは思わないけど、感じのイイ子ですよね。少女・小百合役の志田未来さん。どっかで見たことあると思ったら、NTV“女王の教室”で神田和美役で出てました。なるほど、最後の2回くらいしか見てなかったけど、けっこう印象に残ってるなぁ。東京で心平が再会する小学校時代のクラスメイト役の伊藤歩さん。よっく見たことある顔なのに、何で見たか思い出せない。とりあえず“理由”に出ていたな、と。でも、やけに印象深いんだけど、どこで見てんだろ?

 涙腺の緩いボクですが、グッときたシーンは2ヶ所ほどでしたっけねぇ? ま、とくに小百合のお祖母ちゃんが、小百合に会いにきた心平を見て小百合を抱きしめるシーンは、分かっていてちょっとホロッときました。でも、微妙にボクの好みとズレている気がするのは、いったいどの辺なんだろうかねぇ? 自分でもよく分からないんですが…。

●監督:磯村一路 ●原作:川上健一(小説「雨鱒の川」)