一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

おらおらでひとりいぐも

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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Asmik Ace:作品一覧『おらおらでひとりいぐも』より引用
おらおらでひとりいぐも | アスミック・エース

 (2020日本)

昭和、平成、令和をかけぬけてきた75歳、ひとり暮らしの桃子さん(田中裕子さん)。
ジャズセッションのように湧き上がる“寂しさ”たちとともに、
賑やかな孤独を生きる――

 1964年、日本中に響き渡るファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、上京した桃子さん(蒼井 優さん)。あれから55年。結婚し子供を育て、夫と2人の平穏な日常になると思っていた矢先…突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。図書館で本を借り、病院へ行き、46億年の歴史ノートを作る毎日。しかし、ある時、桃子さんの“心の声=寂しさたち”が、音楽に乗せて内から外から湧き上がってきた!孤独の先で新しい世界を見つけた桃子さんの、ささやかで壮大な1年の物語。

(映画『おらおらでひとりいぐも』公式サイト「STORY」より引用)
oraora-movie.asmik-ace.co.jp


 不思議なことに、予告編を観たときほどの楽しさが感じられなかったのです。

 寂しさ1、2、3を演じられた濱田岳さん、青木崇高さん、宮藤官九郎さんの登場する愉快なシーンが、意外と控えめだったこと。
 蒼井優さん演じる若き日の桃子さんのエピソードが、思いのほかちゃんとしていて、丁寧に描かれていたこと。
 そして極めつけは不意に訪ねてきた娘とのやり取りの世知辛さと、独りで自宅からハイキングして夫との思い出の場所を訪れるくだりで、ガッツリ老いの孤独感を印象付けられてしまったこと。

 こんな流れで、例えば、途中から桃子さんの脳内再生シーンに、寂しさ1、2、3は居ないものとして観てしまうようになり、観れば観るほど一層寂しさが募ってきて、つらくなってしまったのですよ。


 変ですね。観終わった後、『元気づけられた』とか言ったレビューも見たように思うんですけど、元気づけられるほどポジティブな映画だったかなぁ、と首を傾げている自分がいます。

 おそらく。トレーラーを観て、勝手に期待しすぎたせいかと思います。

 桃子さんに見える世界は、確かにユニークで楽しかったですし、端正なルーティーンは、ボクが近い将来目指している理想の〝ぼっち暮らし〟ぶりです。

 たぶん、ボクも桃子さんと同じように独り言ちながら、脳内再生される素晴らしき世界と、なんとなく離れがたい面倒な浮世との間を行ったり来たりしながら、〝健全に〟老いていくんだろうなぁ、なんて思います。

 そう思えば、老いを前向きに捉えている映画ではあるんでしょう。

 ただ、先にも書きましたけど、特にぼっちハイキングのシーンの〝どよ~んとした孤独感〟のインパクトが強すぎて、すべての印象がそこに持ってかれてしまったワケですね。

 とりあえず、好みの作風だけど、まぁフツーに好きという★7つにしときます。

 もしかしたら、もう一回観直したら、印象に変化があるかも知れませんけどね。



 あ、エンドロールの終わりに、SE(効果音)で終わる演出は、好きですよ。

 たぶん、フライパンに卵を落とし入れたときの、じゅわっと油がはじける音。

 桃子さんの一日がはじまる音。

 なるほど。前向きなカンジですね^^


※予告編は楽しい雰囲気がギュッと詰まってたからなぁ……。

映画『おらおらでひとりいぐも』予告(90秒・11/6)


●監督・脚本:沖田修一 ●音楽:鈴木正人 ●フードスタイリスト:飯島奈美 ●原作:若竹千佐子(小説『おらおらでひとりいぐも』/河出文庫刊)