八つ墓村
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(1977日本)
松竹・野村芳太郎監督の“八つ墓村”です。以前、東宝・市川崑監督の“八つ墓村”の感想を書きましたが、本作はかなり趣が違います。
まず、金田一耕助役が渥美清さんで、かなりイメージが異なります。おかま帽も着物も着ていません。時代設定も昭和52年(1977年)当時の現代になってます。それから原作に設定が近く、金田一が主役ではありません。
主役は寺田辰弥(萩原健一さん)ですが、多治見要蔵、久弥の二役をされた山崎努さんが、かなり怖くてインパクト強かったです。小竹・小梅の双子の大伯母も別々の女優さんがやっているのに、きついメイクでホントに双子に見えるので、怖かったです。怖かったといえば、事件が続くうちに、見ている自分まで、村の閉塞感みたいなものに囚われてしまっていることに気づきます。それは、村の外の映像(辰弥が勤務している空港や金田一が調査に赴いた近畿の各地など)に画面が切り替わったときに、ホッとしたモノを感じることで気づくのです。なかなか観る者を引き込む映画ですね。
本作のテーマは、“たたり”なんじゃないか、そんな気がします。金田一は、登場から尼子の落ち武者殺しの因縁話を根掘り葉掘り聞き出し、首謀者4人の名前を知りたがります。そして28年前の多治見要蔵による32人殺しの事件では、寺の過去帳を繰って、一家全滅した3家族のことを調べまくっている様子。そして現代の事件に至る因縁話を発掘し、犯人も想定していなかった「たたり」を持ち出すのです。それ故、映像的にも、後半は怪談あるいはホラーといった趣に傾倒していきます。いやはやなんとも…。
この映画、お金かかってるんだろうなぁ、と思いました。冒頭の落ち武者の敗走する山野の断崖絶壁とか滝とか出てくるシーンや、広大な村の風景、多治見家の目を瞠る威容、そして全国の鍾乳洞を繋ぎ合わせた洞窟のスケール感、とにかくデカイと感じさせる画ばかりです。引いたカメラの多用も効果あげてますね。
まぁ、東宝の金田一が好きな方には肩透かしかも知れませんが、探偵物ではないのだと割り切って楽しめばいいのではないですかね?