一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

頭文字[イニシャル]D THE MOVIE

私的評価★★★★★★★★★★

頭文字[イニシャル]D THE MOVIE スタンダード・エディション [DVD]

 (2005香港/中国)

 しげの秀一さんの人気コミックの映画化です。ストーリーは、主人公の高校生・藤原拓海(ジェイ・チョウさん)が、中学時代から家業のとうふ店の配達のため、父親の愛車ハチロクTOYOTAスプリンター・トレノAE86)を駆って秋名山を往復するうち、とてつもないドライビング・テクニックを身に付け、峠のライバルたちと戦い、いつしか秋名山のダウンヒル最速の伝説を作るようになる、というファンタスティックな青春カー・アクション映画とでも言ってしまえばよいのでしょうか?

 原作からは秋名山までを映画化してますが、実は秋名を出て高橋涼介のチームに入って以降の原作は、連載誌を読んだり読まなかったりで、あまりよく知らないのです。しげのさんのコミックでは、バイクを扱った『バリバリ伝説』が有名ですが、バリ伝は峠から最終的にWGPにまで舞台を移して終わってます。本作も峠からGPレーサーになったんですかね? バリ伝のGPレース編は、予定調和のやや尻すぼみな印象を拭えなかったんですが、ま、それは本作とは関係ない話でした。

 本作は、元々日本公開を前提にして撮影されたんだと思います。が、おそらくオリジナル言語は広東語かと。日本語版は、全編吹き替えですが、意外と違和感ない出来でした。オリジナルの広東語で楽しむ気はしなかったので見てません。たぶん、鈴木杏ちゃんの吹き替え広東語で笑ってまう気がします。

 まったくこの辺、知らないことだらけですが、主役のジェイ・チョウさんは台湾の人気歌手のようですし、一応ヒロイン(?)の鈴木杏ちゃんが日本人、で、残りの主要キャストが香港の映画界の方々ってとこですか? 美術で、いくつか欧米人感覚的『日本の様式らしきモノ』が見えるんですが、それを差し引いても、主要キャストのキャラは、なかなか原作と比較しても興味深いモノを覚えました。かえって日本人でないことが、効を奏しているとも言えるかと。峠のライバルたちの顔ぶれを見て、エボ3の須藤京一のキャラにかなりグッときましたね。所詮は消えていく運命のキャラとはいえ、風格をたたえた憎まれ役ぶりがキリッと立ってましたね。強いて言えば、主役の拓海がかなり原作とイメージ違って見えたことかな? 単に原作のキャラが二重のパッチリした目で、ジェイ・チョウさんのキツネ目とは違うという意味ではなく、しげのさんの描く主人公は、いつもどこか捉えどころのない『不思議ちゃん』な部分を持っている、という点が表現できてないのかな、と思ったのです。ま、原作知らなきゃ、関係ないですけどね。エンドロール見て、峠ギャラリーの女性たちが、圧倒的に日本人だったのには笑いました。わざわざ名前載ってるけど、あなたたち、俳優なの?

 まぁ、本作の見どころは、主要なカーアクション・シーンが、CGなしの実写、という点でしょう。CGをまったく使っていない、という意味ではなく、あくまで画面を切り替えたりする際の効果で使っているだけ、迫力ある走行シーンの部分は現に撮影されたホンモノである、ということです。監督のアンドリュー・ラウさんは、元々撮影畑出身とあって、群馬県榛名山でロケされた走行シーンのカメラワークのこだわりには、ビックリさせられっ放しです。おいしいと思える角度には、とことんカメラを貼り付け、2台が吸い付くように並走してガードレールぎりぎりにドリフトするシーンなどに、胸のドキドキが連続するような映像をこれでもかっというくらいハメまくってます。迫力あるサウンド作りと併せて、かなり満足度が高いと思います。これ、日本人の監督には撮れない画なんかなぁ…と思うと、少しくやしいですね。あ、ときどき、このカメラはどこに付いてんだろう?と思える映像があります。鳥瞰でブレずに車を追うカメラとか、ね。丸っきりゲームの主観映像です。これはさすがにCGなんかなぁ? 特典ディスクなしのスタンダード・エディションにしなきゃ良かったかなぁ…やや後悔。

 そうそう、肝心のカースタント、高橋レーシングみたいですよ。イイ仕事してます。

●監督:アンドリュー・ラウアラン・マック ●原作:しげの秀一(コミック「頭文字[イニシャル]D」)