一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

殺人狂時代

私的評価★★★★★★★★☆☆

殺人狂時代 [DVD]

 (1967日本)

 元ナチのブルッケンマイヤーが、ヒトラーに心酔する溝呂木博士(天本英世さん)の精神病院を訪れ、ある依頼をしました。実は溝呂木博士は、人口調節のために無駄な人間を抹殺する“大日本人口調節審議会”を組織し、殺し屋を養成していたのです。ブルッケンマイヤーは、その殺し屋たちの腕前を試すため、電話帳からランダムに3人のターゲットを選んで殺しの依頼をしたのでした。そのターゲットのひとりに、ケント・デリカットさんのような遠視用メガネをかけ、両足の水虫に悩む冴えない犯罪心理学者の桔梗信治(仲代達矢さん)がいました。桔梗は、偶然にも殺し屋の頭上に落ちてきたブロンズ像で、ピンチを脱します。そして、偶然か、悪運が強いのか、桔梗は次々と溝呂木博士の刺客を撃退してしまい、ついには溝呂木博士本人の招待を受けることになりました。果たして…。


 以前、スカパー!の日本映画専門チャンネルで観ていたのですが、都筑道夫先生の原作(『飢えた遺産』現在のタイトルは『なめくじに聞いてみろ』ですね)ということで購入しました。原作を読んだのは、都筑先生にハマっていた学生時代の話ですから、もう20年以上前になってしまいます。原作では確か、東北の山中から出てきた桔梗信治が、父の育てた13人の殺し屋たちを次々と抹殺して、父の血に飢えた遺産を清算するというストーリーだったと思います。基本の設定は変わっているようですが、本作は本作でなかなかサスペンス度も高く、どんでん返しの趣向も組み込まれ、エンターテインメントとして充実していると思います。元々原作が映画を見るような雰囲気の描写(都筑先生の作品には多いですね)なのですが、映画化されているのは知りませんでした。

 ヒトラーの映像や精神病院の描写など、見る人によっては、少々引いてしまう場面もあるかな、とは思いますが、主演の仲代さんのすっとぼけたセリフ回しや、共演の砂塚秀夫さん演じる大友ビルのコメディタッチの役どころなどに救われて、さほど眉をひそめるような作品ではないと思っています。むしろ原作のスタイリッシュな雰囲気と、画面を飾る60年代テイストたっぷりのセットなどから、カッコいい映画という印象を受けます。わざわざモノクロ映画にしているのもオシャレですね。

 本作は元々一端オクラ入りになったあと、1週間の封切りだけでまたしばらく上映されていなかったのが、リバイバル上映で人気が出て映画ファンに支持された、というような作品らしいです。DVDで生き残ってくれたことは喜ばしいことですが、これだけ多くの映画がDVD化されている現代でも、いまだに埋もれている良作・佳作が数多くあります。死ぬまでにいったいいくつの作品に接することができるか…なかなかねぇ…。

●監督:岡本喜八 ●原作:都筑道夫(小説「飢えた遺産」)