亀は意外と速く泳ぐ
私的評価★★★★★★★★★★
(2005日本)
片倉スズメ(上野樹里さん)は、海外赴任中の夫に代わって、ペットの亀に毎日エサをやっています。平凡で単調な毎日を送るしかないスズメは、自分の平凡さを嘆いていましたが、ある日見つけた指先ほどの小さな小さな『スパイ募集』の張り紙から、シズオ(岩松了さん)とエツコ(ふせえりさん)という一見平凡な夫婦のアパートを訪れました。ある国のスパイだという彼らは、スズメの平凡さを褒めちぎり、いきなり活動資金500万円を押し付けると、彼女に『目立たないように平凡でいること』というミッションを与えました。平凡で単調な毎日は、スパイ活動というフィルタを通すことにより、スズメの心を高揚させますが…。
こんな緩い映画に満点をあげてもいいのだろうか---いいんです。所詮見たときの感情に任せた採点なんだから。
初めはどんな映画なのかよく分からないんですよね。妙にポップな色のマンションの一室で、ポップな甲羅の亀にエサをやる平凡な主婦。予告編なんか見る限りは、コメディには違いないと思ってたんですけど、コメディタッチの割りに、意外とシビアでサスペンスフルな展開になったりして、90分間であっという間にこの映画の虜にされてました。
とにかく90分という短い映画なので、テンポよいBGMに乗っかって、サクサクとストーリーが進むんですが、一見どうでもいいようなエピソードの羅列が、いつの間にか、どれかひとつが欠けても作品が台無しになってしまうと思えるほどに、うまく絡み合ってしまい、三木監督の作りこみのうまさに思わず唸ってしまいました。
こういった映画では、とかくキワモノ的登場人物たちの過剰な演技に、妙に興醒めしてしまうことが、ままあるんですが、本作の場合は完全に自分の『笑いのツボ』に嵌まってしまい、ほとんど無意識のうちに笑い出しながら見ていました。温水洋一さん、あなたのキャラ、大好きです。本作でも無茶苦茶面白かったです。
舞台になっている海岸べりの田舎町の雰囲気も、かなりいい味出してますね。
久々にええモン見せてもろーたわい、て感じです。
●監督・脚本:三木聡