一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

最終兵器彼女

私的評価★★★★★★★★★☆

最終兵器彼女 [DVD]

 (2006日本)

 小樽の高校生シュウジ窪塚俊介さん)が、ちせ(前田亜季さん)に告白されて1週間後のこと。札幌でちせへのプレゼントを買っていたシュウジは、突如飛来した国籍不明の戦闘機の襲撃を受け、脚を負傷します。そのとき、逃げ遅れたシュウジを守ったのは、全身兵器となり空から舞い降りたちせでした。彼女は自衛隊によって『最終兵器』として改造され、国防の要であることを宿命付けられていたのです。やがて戦火が小樽にも飛び火し、戦争を身近に感じるようになったシュウジは、ちせとの恋にとまどいながら…。


 一女子高生が、なんで国防の要の最終兵器に改造されてまうのか、実はそんなの些細な問題なのです。本作は、まちがいなく純愛ラヴ・ストーリー、そして戦争だとか最終兵器だとかいう設定は、その純度を高める極限状態をもたらすための演出でしかありません。別に戦争でなくても、不治の病だったり、家同士の諍いだったり、ラヴ・ストーリーを盛り上げる設定はさまざまありますし、そういう意味では、ついついツッコミたくなるような部分は、気にしちゃあ野暮というものです。

 CGやVFXを駆使した戦闘シーンは、けっこう怖い演出がなされていると思います。冒頭の札幌爆撃のシーンでは、破壊された戦闘機の翼が落下して大通りを転げ周り、逃げ惑う人間を襲うというシーンが作られています。単に爆発炎上して破壊しつくされるより、はるかにリアルな怖さが感じられました。爆撃などの音の構成も迫力あって、怖さを増してくれてました。

 本題のシュウジとちせの恋は、とても丁寧に描かれています。不器用なふたりの恋の馴れ初め。付き合い始めたけど、なかなか前に進めない微妙なふたりの気持ちの動きが、ちょっとした仕草や表情から痛いほど伝わってきて、とても好感を覚えました。また、交換日記というのが、全編を通してとても心に響くアイテムとして、効果的に使われています。

 前田亜季さんは、10歳前後くらいの子役のころは、ため息が出るほど可憐でかわいい美少女でした。二十歳を過ぎた今、なんでそんなにイカリ肩になってしまったの?という思いがあったのですが、女優さんは完璧に美しいだけじゃあイケないんですよね。多かれ少なかれ完璧でない部分を持ち合わせていた方が、ファンに愛されるような気がしてます。ま、戯言はさておき、前田さんは、かわいいけどちょっとトロいことをコンプレックスに抱いているイジラしい少女ちせの役を好演しています。きっと、見た目もその辺の印象に影響していると思うのです。

 窪塚俊介さんは、窪塚洋介さんの実弟だそうです。あんまり似てないかな? どーでもいいネタですが、ボクと誕生日が一緒です。もちろん、親子ほど年齢は離れています(自爆)。

 音楽が、かなり画面にフィットしていて心地よかったですねぇ。ちせのカセットに入ってた女性ヴォーカルの挿入歌もよかったです。

 ラスト・シーンは、原作版とアニメ版と映画版では全く違う内容なのだそうですが…微妙。そんな映像で終わるのもありだとは思うし、きっと監督の優しさが出た映像なんだろうなとは思いつつ、直前の砂漠の映像の中で同じアイテムを使って、切なさで胸が張り裂けそうになりながら終わってもよかったかな、という思いが…ほとんど満点に近い星9.5なんだけど、終わりよければ何とやらで、ちょっとだけ引っかかったので。

●監督:須賀大観 ●原作:高橋しん(コミック「最終兵器彼女」)