一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

雨の町

私的評価★★★★★★★☆☆☆

雨の町DVD
雨の町 デラックス版 [DVD]

 (2006日本)

 季節外れの通り雨の日に、子どもたちが帰ってくる…。ある山間地方の村の渓流に、内臓が全くないという少年の死体が流れ着きます。謎を追うフリーのルポライター兼石荘太(和田聰宏さん)は、早速死体が安置されている病院へ取材に訪れましたが、そこで見たものは、起き上がって駆け出していく少年の死体でした。少年の遺留品の名札から、荘太は丙村(ひのえむら)小学校のある町役場を訪ねます。ところが、そこで聞かされたのは、すでに丙村小学校は廃校になって久しいこと、そして、少年の名前が35年前に集団失踪した子どもたちのひとりであることでした。荘太は役場の女性職員・香坂文緒(真木よう子さん)の案内で、丙村に残る数家族の家を訪ねることにします。道中に降り出した雨の中、文緒は『子どものころ、こんな雨の日は雨に飲まれるから出かけちゃいけない』と言われていたことをポツポツと語り出しました…。

 ネタバレしそうで書きづらいんだが、とりあえず面白かったのです。リング以降の昨今のホラーブームでホラー映画にはうんざりしていて、もうエエやろ、と思ってたんですが、たまたま見つけた公式サイトの宣伝に惹かれて、ついつい買ってまったのです。

 雰囲気は奇談のような伝奇ホラーです。昔話や民間伝承を前面には出してないんですが、明らかにモチーフとして底流に流れている、そんな臭いがします。けっこう個人的には好きな雰囲気の映画です。

 ストーリー的には、合理的な説明をしない部分がけっこう残っています。見終わったあと、観賞者に判断を委ねるというよりも、恐怖の演出のためにいちいち説明しない、といった方が正しい解釈でしょう。なので、冷静に見てしまった人は、「?」な映画かもしれません。しかし、その「?」のために、もう一度、またもう一度と、繰り返し見直してしまう、そういった魅力があるのも確かです。

 恐怖の演出は、主に突発的な衝撃音と、暗転による場面切替…基本的に見る者の想像力を刺激し、恐怖を増幅させる手法と見ました。グロい映像は基本的に見せない配慮があります。そういったところが、ホラー嫌いなボクでも観賞に耐えた理由のひとつです。

 子どもたちの中で唯一の女の子、絢子役の成海璃子さんなんですが、小学生というには成長し過ぎてますね。実際14歳は、かなり大人びて見えます。重要な役どころなのに、ちょっと輝きが足りない印象なのは、彼女の演技のせいなのか、監督の演出のせいなのか…とりあえず、セリフが少なすぎて、喋り方もパッとしないので、感情移入は難しかったです。短い単語だけのセリフで感情を乗せるのは、難しかっただろうとは思うんだけどねぇ…。

 ストーリーについて、もうちょっとツッコミ入れたいところもあるんだが、これ以上はホント、ネタバレになってしまうので、残念ながら今の書き方のスタイルでは書けません(『この続きを読む』というスタイルをとってないので…)。で、あえて一言書くなら、クライマックスの心情描写が微妙で、ラストの恐怖感が「?」な感じに薄れてまったかなぁ…といった印象です。何回も見直すと、そのへんの印象は変わりそうな気もするんですが…。

●監督:田中誠 ●原作:菊池秀行(小説「雨の町」)