一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

おいしい殺し方 A Delicious Way to Kill

私的評価★★★★★★★★☆☆

おいしい殺し方 A Delicious Way to Kill 通常版 [DVD]

 (2006日本)

 おそろしくまずい料理を作ってしまう料理音痴の消崎由香(奥菜恵さん)は、男にフラレるたびに児童に八つ当たりをして、逆に児童に諭されてしまうような破天荒な小学校教師です。5日後の次の土曜日に、同僚の男性教師に食事を作る約束をした由香は、テレビで人気の若手料理研究家東大寺ハルキ(久ヶ沢徹さん)の勤める料理学校に渋々入学しました。最初の授業の前、由香は小学校の教頭の妻・白石カナエ(犬山イヌコさん)に声をかけられ、隣の席に座らされると、彼女に無理やり付き合わされることになります。そして第2回目の授業の日、由香はハルキから誘いのメールをもらいますが、ハルキは授業に姿を現しませんでした。不審に思ったカナエは、ハルキと同じマンションに住む友人の山内キヨミ(池内のぶえさん)に、ハルキの様子をこっそり伺うように依頼します。ところがその矢先、芝居の稽古に出かけようとしたキヨミの前に、ハルキが飛び降りてきて死んでしまったのです…。


 で、まぁ、おせっかいなカナエとキヨミのふたりに巻き込まれ、由香はハルキの死の真相を突き止める羽目に陥るワケですが、その経緯がハチャメチャなナンセンス・コメディ・サスペンスという作品です。

 サスペンスだと思えば、ストーリーは直球ですが、コメディだと思えば、かなりクセ者揃いで、アタマが痛くなってきます。でも、ついつい笑ってしまうので、ボクの負けですね。とにかく、おせっかいなカナエと、突拍子もないことをしでかすキヨミのオバサン・パワー炸裂で、見ていて爽快さよりも、多少なりとも“げんなり”しながら笑わされています。カナエの夫のまっとうな言動が、なんとか常識人との間を取り成してくれて、心の平静さを保たせてくれているような感じさえしました。ホント、オバサンたちの言動は、見ていて次第に不快ささえ覚えるほど、ハチャメチャです。でも、それが監督の狙いでしょうな。

 奥菜恵さんは、顔がスキじゃないんです。見ていてコワイ…作中、ほとんど中年のオヤジがかけるようなダサいメガネをかけて、オシャレに気を配らないブサイクな女を演じているんですが、由香は『ワタシ、キレイでしょ!!』と言ってしまえるほど実はナルシストな部分を持っていて、そんなところが思い切り出ていると思われたのが、唯一メガネをとってウィグまで被って思い切りオシャレして容疑者と接触する場面なんです。その場面の顔…やっぱり、コワかった…あの大きい瞳がコワイのかも。

 あまり奥菜恵さんの出演作は見ないんですが、こういう壊れた女の役、イケてますね。ヒステリックだったり落ち込んだりする部分が自然に出ていて、うまいな、と感心しました。そういう意味では、主要なキャストにハズレがない作品でした。

 ま、オバサン・パワーに圧倒されながら、肩の力を抜いて、笑って見てください。

 ところで、本作はビデオ素材みたいですね。BSフジとネットテレビGYAOが共同出資して、双方で流したあと劇場公開されたそうです。確かに地上波のドラマとは色合いが違うかもしれませんが、なんと言ってもフジが噛んでいるというあたりに、フジの地上波のドラマと同じ臭いを感じてしまいました。あぁ、なるほどな、と。劇場で見たら、どんな感じなんでしょう。どう見ても、画の質感がテレビなんだけど…。逆にフィルムだったら、全然雰囲気違うだろうね。テレビ画面の質感で、テレビのノリをやるから安心して見ることができるんだと思いました。

●監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ