一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

さよなら夏休み

私的評価★★★★★★★★☆☆

さよなら夏休み [DVD]

 (2010日本)

 平成21年、東京で町工場に勤める幸田裕史(緒形直人)は、同僚に独立を誘われ、迷っていた。そんな折、少年時代を過ごした岐阜県郡上八幡から、鶴来学(要潤さん)医師の訃報が届く。裕史は妻のゆき(中山忍さん)とふたりの子どもたちを連れて、30年ぶりに郡上八幡を訪れ、11歳の夏休みの出来事を回想し始めた。昭和52年7月、祖父の玄昭(古谷一行さん)が住職を務める寺に預けられ、夏休み前に転校してきた裕史は、自然の中でたくましく遊ぶ同級生らに馴染めず、趣味のカメラに没頭していた。裕史は、担任教師の水帆(立花美優さん)に母の面影を重ね、ほのかな憧れを抱き、彼女を何度となく撮影していた。水帆には医師である恋人、鶴来学がいた。学は水帆が白血病を発症していることに気づき、大学病院へ入院させるが、水帆は郡上に戻ることを望む。そして、学が不在の『郡上踊り』の夜、水帆は不意に倒れてしまうのだった…。30年間封印していた、夏休みの思い出が鮮やかに蘇る。親に捨てられた転校生としてイジメを受け、がむしゃらに立ち向かったこと。担任教師への淡い初恋。一念発起して泳ぎの練習にはげみ、全力を振り絞って勇気を出したこと。全てを思い出した裕史は…。


 演出上、『郡上踊り』のシーンが頻繁にインサートされるのが、ちょっとやかましく感じました。この辺りが、ちょっと減点かなぁ…^^;
 急性骨髄性白血病ねぇ…不治の病で大切な人が亡くなる映画は、過剰なお涙頂戴的なドラマや演出が好きじゃないのですが、本作の登場人物たちは極めて自然なやりとりをしていて、すんなりと感情移入できました。
 水帆先生が、子どもたちとふれあうシーンが、とても良かったです。方言の力もあるとは思いますが、立花美優さんの演技がすごくナチュラルな感じで、ホントの先生と児童たちのように見えました。こんな先生に教わるなら、羨ましいですねw
 そして、子どもたち。裕史と同じく寺に預けられ、『捨て子』、『貧乏』と言われ、いじめられていたふたりの少年たち、裕史たちをいじめる数人の少年たち、水帆のいとこで裕史に好意を寄せるゆきなど、登場する子どもたち全ての生き生きとした姿が、瑞々しく描かれています。その中で、郡上八幡の川の流れが、ひと夏の子どもたちの成長を見せてくれる重要な舞台になっています。飛び込むシーン、泳ぐシーン、子どもたちが見せる勇気と友情、ステキな舞台です。
 そして最後には、裕史が子どもたちの前で、30年前に見せた勇気を再現して見せます。封印していた30年前の夏休みにさよならをし、すべての迷いをふっ切るかのように…。

 なんか、じんわりくる良作ですね。

●監督:小林要 ●原作・監修:高田拓土彦(「さよなら夏休み」ユーフォーブックス刊)