一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

深呼吸の必要

私的評価★★★★★★★★★☆

深呼吸の必要 [DVD]

 (2004日本)

 沖縄の離島で平良のおじぃ(北村三郎さん)とおばぁ(吉田妙子さん)が耕作する広大なさとうきび畑に、東京からやってきた男女5人の『きび刈隊』の面々(ひなみ(香里奈さん)、池永(谷原章介さん)、西村(成宮寛貴さん)、悦子(金子さやかさん)、加奈子(長澤まさみさん))。『きび刈隊』の先輩、田所(大森南朋さん)の手ほどきで35日間のさとうきび収穫のアルバイトを始めた彼らは、東京の生活でそれぞれに心の傷やジレンマを胸に抱いてここへやって来ていました。一本一本手で刈り取る過酷な作業に戸惑いながら、なかなか作業効率の上がらない5人の新米『きび刈隊』。35日後には製糖工場の受入れが締め切られるため、5人を叱咤激励しながら作業を続ける田所。そんな彼らを見守りながら、『ダメになったらまた初めからやり直せばいい』『なんくるないさぁー(どうってことない。なんとかなるさ)』と言葉をかけるおじぃとおばぁ。やがて彼らは、途中で加わった美鈴(久遠さやかさん)とともに、かけがえのないモノを手にしていく…。


 去年の秋にDVDを買ってから、見よう見ようと思いながらついつい見るタイミングを逸してきた作品です。1年経って、やっと見ました。
 映画を見るときの自分の状況によって、映画から感じるモノは変わってきます。この映画は、どちらかと言えば、地味な作品です。地味であるがゆえ、つまらないと感じる人も多いかも知れませんが、この映画がつまらなかった人は、現実の世界で、それなりに充実した生活を送っていらっしゃるのではないかと想像します。たぶん、ボクはいつ見ても感動してしまうような気がします^^;

 青い空と緑の大地と、穏やかで暖かい冬の沖縄の陽射し。ひたすら…毎日ひたすら汗にまみれ、広大な大地に立錐の余地もなくぎっしり生い茂った、さとうきびを刈り続ける…そして、日に日に小麦色に灼けてワイルドさを蓄えていく新米『きび刈隊』の面々。それとともに、次第に広がっていくさとうきび畑の大地。やがて訪れる35日の期限に、何が待っているのか…?

 田所を始め、『きび刈隊』の面々は、大なり小なり心に何かを抱えています。しかし、『言いたくないことは言わなくていい』というのが、平良家のルール。誰かが悩みに対して気の利いたアドヴァイスをするでもなく、ましてや説教するでもない。ときには心のわだかまりが暴発することもあるが、必要以上に衝突しないし、衝突によって何かが明確に変わるワケでもない。おじぃとおばぁは、来るものは拒まず、去るものは追わず、ただただ優しく微笑みながら、若い『きび刈隊』の面々を見守るばかり。『なんくるないさー』と。

 実際にさとうきび畑が次第に刈り広げられていく様子を見ていると、主人公たちの活動が、とてもリアルに伝わってきます。そして仕舞いには、自分もその場できび刈りに参加していたような錯覚を覚え、なんとも言えない感慨に包まれます。
 なんとも言えない、爽やかなエンディング…邦画が好きで良かったと思いました。心が疲れたとき、ぼんやり見るのもイイかも知れません。

●監督:篠原哲雄 ●参考文献:長田弘(詩集「深呼吸の必要」)