一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ニライカナイからの手紙

私的評価★★★★★★★★★★

ニライカナイからの手紙 [DVD]

 (2005日本)

 沖縄の竹富島では、『うつぐみ』の精神、すなわちみんなで協力することが、今でも一番大切なこととして実践されているそうです。
 幼くして父を亡くした安里風希(蒼井優さん)は、島の郵便局を運営するおじぃの尚栄(平良進さん)とおかぁの昌美(南果歩さん)とともに、竹富島で暮らしていましたが、まもなくおかぁも東京に出ることになり、おじぃや、島のみんなに助けられて成長していきました。風希が7歳の誕生日を迎えると、その日から毎年誕生日に東京のおかぁから手紙が届くようになります。しかし、おかぁは、なかなか島に戻って来れませんでした。そして、風希が14歳の誕生日には、『風希が20歳になったら、全てを説明するから、それまでは会えなくても我慢してほしい』という内容の手紙が届きました。風希は幼いころから、父の形見のカメラに興味を抱いていて、高校を卒業したら、東京に出て、カメラマンの仕事を勉強したいと考え始めます。それは、東京に居るおかぁに少しでも近づきたいという願いでもありました。おじぃの反対を押し切り、島のレイナ姉(かわい瞳さん)の紹介で、東京のカメラマンの住み込みアシスタントの仕事を始めた風希でしたが、仕事は予想以上にキツく、次第に自分で写真を撮る気力までも失ってしまいました。19歳の誕生日、『あと1年経ったら、おかぁに会える』という希望を胸に、写真を撮ることを再開した風希は、専門誌のコンクールで入賞し、おかぁに会うために約束の場所に向かいます。ところが…。


 見ていて、おかぁがどういう生活をしているのか、とか、なんで手紙が誕生日にしか届かないんだろう、とか、いろいろ疑問に思いながら、ついつい下世話な想像を巡らしてしまい、そんな展開になったらイヤだなぁ、なんてことを考えてしまったのですが、結末は…おじぃとおかぁの強い愛情に泣けました。う〜ん、でも。似たような設定のファンタジーを見ているのだがね。毎年誕生日にケーキが届く映画。分かる人にだけ分かればよろしい。ネタバレすれすれやな(苦笑)。とはいえ、エンディングまで、ホントに人の優しさが心地よく伝わってくる映画で、とても気持ちよかったのです。久々に★満点で。

 途中で舞台が東京に変わってしまったあと、ちょっと興醒めしてしまったのですが、さほど東京のギラギラしたところが画面に現れず、あくまで竹富島の落ち着いたトーンに合わせた映像に統一されていたように思います。新宿や渋谷を映しながら、あんなに『らしくない』東京の映像も珍しいかな、と。

 竹富島で毎朝行われる、家の前を掃き清める活動。みんなが一斉に家々の門に立ち、通り過ぎる人にあいさつをしながら、黙々と庭ぼうきで道を掃く…ストーリーの中で何度か繰り返される映像。なんだか、とても美しい習慣だな、と思いました。島の人々の『うつぐみ』=共同体意識の現われでもあるんでしょうね。風希が島を出るときには、フェリー乗り場に見送りに立ち、そして島に帰ってきたときには、家に手土産を持って並ぶ。島の人々の情の厚さを感じる場面ですが、あまりに厚くて息苦しさを覚えないんですかね?---共同体の壊れた社会に住むモノのやっかみかな?

 風希に心を寄せる幼なじみの海司役の金井勇太くん、どこかで見たことあるんだけどなぁ…と思ってたんです。過去の日記から『69』のイワセ役というのは分かったんですが、それもピンと来ない…で、やっと思い出したのが、ウルトラマンダイナ第27話『怪獣ゲーム』で、ゲームの中で怪獣を育成するちびっ子ゲーマーだったのです。まだ声変わり前の小学生時代のようです。けっこう記憶の片隅に残っているモンだなぁ…。

 すでに見た方、風希の卒業証書の日付、見ました?『平成61年1月』って…『未来、かなり、からの手紙』です(爆)。

●監督・脚本:熊澤尚人