一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

大巨獣ガッパ

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

大巨獣ガッパ
大巨獣 ガッパ [DVD]

 (1967日本)

 雑誌プレイメイト社のワンマン社長・船津(雪丘恵介さん)は、南海の楽園を模した巨大なレジャーランドを建設することを画策し、南海の島々からさまざまな生物や原住民を連れ帰るため、探検隊を派遣しました。南海の孤島オベリスク島に着いた一行は、原住民の子どもサキ(町田政則さん)のあとをつけて洞窟の中に潜入し、巨大な卵を発見します。まもなく発生した地震で卵から謎の生物(子ガッパ)が孵ると、一行はその生物を日本に連れ帰ることにしました。日本に帰ると、探検隊に同行していたプレイメイト社の記者の黒崎(川地民夫さん)と生物科学者の殿岡(小高雄二さん)は、子ガッパを世に送り出すための手柄を巡って対立しますが、 船津社長の一言で、1ヵ月後にオープンするレジャーランドの目玉として発表するまで極秘事項とすることになり、それまで殿岡が、大学の研究室で子ガッパを一時預かることになります。探検隊のメンバーだった黒崎の後輩の小柳糸子(山本陽子さん)は、研究室の牢屋で実験される子ガッパの姿に胸を痛めます。やがて、オベリスク島から2頭の親ガッパが熱海に上陸すると、自衛隊の戦力がまったく歯が立たないほどの大暴れをしてしまいました…。


 東宝の『ゴジラ』が1954年、大映の『大怪獣ガメラ』が1965年、現代の特撮怪獣映画の2大人気怪獣に遅れをとること2年、日活が世に送り出した唯一の怪獣映画です。きっとコスト・パフォーマンスの悪さに、続けられなかったのでしょう。

 けっこう人間同士の会話がよくこなれていると思いました。雑誌プレイメイト社の社長や記者、生物科学者たちの手前勝手な理屈の応酬の前で、戸惑いながらも彼らの過ちを必死に正そうとする新米女性記者の構図が人間関係の基本です。その辺の分かりやすい関係を無理なくつなぎ、会話も簡単に相手の説得に流されることなく、ちゃんとお互いの主張がかち合うという展開、見ていてちゃんとドラマができているな、という印象でした。

 割と理に適った展開のストーリーなのですが、数点気になったことがあります。ガッパの子を研究するうち、殿岡は『爬虫類より鳥類に近く、強力な帰巣本能を有し、親に自分の居場所を知らせる能力を持っている』らしいと結論づけ、実際オベリスク島から子どもを追いかけて親ガッパたちが日本に上陸するのですが、最後になって、都合よく(?)『火事で子どもの声が聞こえないらしい』という展開、なんかヘンですよね。おまけに再会したガッパ親子の異常に人間ぽい愛情表現、『爬虫類よりも鳥類よりも人間に近い』と結論づけられません? 鳥類なんかに近かったら、孵化したときの刷り込み効果で、探検隊のメンバーを親と思い込んだりとかせんのか?(実際、鳥類のインプリンティング効果がどれほど顕著なのかは、知りませぬが…)などと、ちょっとイチャもんつけてみたり。

 特撮はなかなか頑張っていました。オベリスク島の島民が逃げ惑う中に現れるガッパの足の質感など、かなりリアルな映像でした。あえて難を言えば、光学合成の細部で、合成される洪水などの映像が、微妙にメインの映像を侵食し過ぎているのが目についたところぐらいですかね。牢に入れられた子ガッパの前で慌てる雑誌社の秘書の背広が、時折透けてたりしました。透明人間になりかけ?(笑)

●監督:野口晴康

《初期発売作品は復刻版のフィギュア付きでした。》

大巨獣ガッパ DVDコレクターズBOX

大巨獣ガッパ DVDコレクターズBOX

  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2000/02/25
  • メディア: DVD