一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

天然コケッコー

私的評価★★★★★★★☆☆☆

天然コケッコー [DVD]

 (2007日本)

 中学2年生の右田そよ(夏帆さん)が通う山陰の田舎の村の分校は、中学生3人、小学生3人の合計6人しかいない小さな学校でした。そこへ東京から大沢広海(岡田将生さん)が転校して来ました。広海はそよにとって、初めての同級生になりました。


 くらもちふさこさん原作のコミックの映画化だそうです。ボクにとっては、なつかしい名前ですね、くらもちふさこさん。大洋アパートに暮らす、さまざまな世代の子どもたちの登場する『いろはにこんぺいと』にテイストが似ています。

 設定はくらもちさんの母方の出身地である、島根県浜田市周辺がモデルだそうです。山の中の分校なのに、歩いて20分、一山越えると山陰線のすぐそばに日本海というステキなロケーションで、物語の中にもこのステキな場所の、四季折々の美しい風景がふんだんに挿入されていて、全体的にのんびりとした雰囲気があります。と言っても、同じ島根県を舞台にした『白い船』ほど、物語そっちのけに『日常の風景ばっかりのドキュメンタリータッチ映画』にはなっていません。ちゃんとドラマは進行していきます。

 ドラマ部分は…中学2年生〜高校に入学するまでという期間の、そよと広海の物語を軸にした、子どもたちとその家族のお話です。季節ごとのエピソードをけっこうしっかり詰め込んでるなぁ、という印象で、仕方ないとはいえ、時折エピソードのつなぎ目の暗転が、ほんのちょっぴり気になりました。暗転部分を繰り返し見ているうち、そこだけ何となく単調に感じることがあったのです。

 何でだろうと思ったんですが、ほとんどBGM(あるいはブリッジ的なジングルとか効果音)が流れてないせいなんですよね。でも、これ、すごくイイな、と思ったんですよ。BGMで過剰に盛り上げる演出がないせいで、純粋に物語の世界を楽しめるし、何より役者さんの演技、セリフ回しだとか、間合いだとか、そういった部分をじっくり堪能できる、と感じたんですよね。おかげで、そよの、本当に微妙なココロのゆらぎだとかキモチの高ぶりだとか、そういった夏帆さんの演技の良さが、とっても強く印象に残りました。

 バレンタイン・チョコがぐるっと一回りして広海の手に渡るエピソードが、なかなか気が利いててキモチよかったです。

●監督:山下敦弘 ●原作:くらもちふさこ(コミック「天然コケッコー」)