地下鉄(メトロ)に乗って
私的評価★★★☆☆☆☆☆☆☆
(2006日本)
小さな衣料品会社で女性用下着の営業に携わる長谷部真次(堤真一さん)は、43歳になったある日、義絶した父親が倒れたという知らせを受けました。真次の父・小沼佐吉(大沢たかおさん)は、一代で財を成した小沼グループの創始者でした。少年時代の兄の死をきっかけに、それまでも父の家族に対する傲慢な態度に反発を覚えていた真次は、高校卒業と同時に家を飛び出していました。父の知らせを受けたその日、在りし日の兄や父のことを思い出しながら、いつものように地下鉄で移動していた真次は、いつの間にか昭和39年の東京にタイムスリップし、そこで亡くなったはずの兄の姿を見かけ、後を追いかけます。真次はその後も何度か現在と過去を行き来し、やがては不倫相手の軽部みち子(岡本綾さん)もタイムスリップに巻き込まれ、昭和21年の戦後の闇市でしたたかに生き抜く若き日の父に出会うことになります。
タイムスリップを繰り返しながら、父の過去を知り、厳格で家族に冷たい父の本来の姿を窺い知ることで、どんな人でもさまざまな過去の積み重ねの上に今の姿があるのだ、ということを知らしめてくれる、捩れた家族にはちょっと感じるところがあるかも知れない、そんなお話です。まぁ、そんなことは、43歳にもなれば、わざわざ過去を覗きに行かなくても、自分の経験値からある程度のことが推し量れるだろうに、などと当たり前のことを思いながら、どうにもこのタイムスリップ譚に、今ひとつのめり込めない自分があります。
父と真次の関係については、まぁ…そうかぁ…って感じ。ハッキリ書けない部分もあるけれど、そういうお話なんやね、と理解できたのですが、難解だったのが、愛人みち子と過去で出会う母(常盤貴子さん)との関係なんですよねぇ。みち子が母の過去に遭遇し、どういう感情を抱き、なぜそのような結末を選んだのか…みち子については、語られる明確なコトバがあまりありません。なので、彼女の心情については、画面から推測するしかないワケですが、そうなると、ボクには理解不能です。男だからかなぁ…。おまけに、彼女の取った手段は…あぁ、これも書いてはいけませんね。でも、少なくとも、掟破りであることは確かです(あぁ、書いちゃった…)。
登場人物の演技はこなれていて、安心感がありました。特に, みち子役の岡本綾さんの演技は雰囲気がよく出ていました。ストーリーに納得できる方なら、評価は高くなるでしょうね。