一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

キサラギ

私的評価★★★★★★★★★★

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

 (2007日本)

 D級アイドル・如月ミキの焼身自殺から1年、ファンサイトを通じて彼女の1周忌を偲ぶ会の呼びかけに応じ、5人の男たちが集まりました。ファンサイトの運営者である家元(小栗旬さん)、偲ぶ会の発起人であるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリアさん)をはじめ、安男(塚地武雅さん)、スネーク(小出恵介さん)、イチゴ娘。(香川照之さん)の5人は、喪服に着替えて如月ミキの思い出を語り始めますが、やがて5人の中から彼女の自殺に対する疑問が持ち上がり、彼女の死の真相を追究する推理合戦が始まりました。その過程で次々と明かされていく5人と彼女との関係、そして彼女はなぜ死んだのか…。


 密室に集まった面々が、過去に起こった事件について話していくうちに新たな真相にたどり着くという話の展開の仕方が、12人の優しい日本人という映画に似ています。あちらは映画なのに俳優さんの絡み方が舞台のお芝居的なテンポで進行していく作品でしたが、本作のテンポは実に小気味よく、見ていて爽快でした。

 まぁとにかく、すごいです。あまりのテンポの良さと5人の絡みのすばらしいノリの良さで、夜明け前だったのに、一気に見てしまいました。演技の達者な5人の見事な呼吸に感心しきりで、ときに笑い、ときにサスペンスにドキドキし、最後はちょっぴりホロッとさせられる、実に面白い作品でした。

 ネットで知り合った素性の分からない5人の正体が次々と明かされていく過程は、実にシナリオがよく練れていて、かなり痛快です。しかも、二転三転するミキの死の真相(らしきもの)に合わせてころころと変わっていく、5人の立場や感情の変化が実に巧みに語られていて、本当に楽しいお話でした。

 あぁ、最後の最後、よく分からないシーンがありますが、蛇足のような気もするし、あぁ、まだ混ぜっ返してみせようとするのね、みたいな気もするし、まぁ、この辺は好みが別れるところかもしれませんが、ボクはあまり気にしないことにしました。それぐらい出来が良かったということです。

 小栗旬さんは、本当にイイなぁ…。

●監督:佐藤祐市 ●脚本:古沢良太