一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

サイドカーに犬

私的評価★★★★★★★★★★

サイドカーに犬 [DVD]

 (2007日本)

 近藤薫ミムラさん)は、20年前の小学4年生の夏休みのことを思い出していた。父(古田新太さん)と折り合いの悪くなった母(鈴木砂羽さん)が突然家出をし、入れ替わるようにしてやってきたヨーコ(竹内結子さん)のことを。ヨーコはドロップハンドルの自転車を駆って、颯爽とやってきた。タバコをスパスパと喫い、麦チョコをカレー皿にぶちまけ「エサ」と言って差し出す豪快な人だった。豪快に笑い、清志郎の歌を教えてくれ、ご飯を作ってくれた。そして何より、「自転車に乗ること」を教えてくれた。「自転車に乗れるようになると、世界が変わるよ」と言って。母の厳しい躾を守り、真面目一辺倒だった10歳の薫(松本花奈さん)は、母と正反対のヨーコを次第に好きになっていった。しかし…。


 ヨーコが薫のアパートにやってきたときのアパート内のカメラが、むちゃくちゃブレブレで、見ていて気持ち悪くなってしまいました。ほかにも少しカメラのブレが気になる箇所があったのですが、その点を除けば、とても面白かったです。

 セリフの間や出演者の立ち居振る舞いがとても自然でリアルに感じられ、見ていてついつい引き込まれてしまいました。感情が爆発し、殴り合いになる場面でも胸の痛くなるような切迫感がありましたし、ついつい泣き笑いしてしまうシーンの演技なども見ていて本当にそういう場面に居合わせてしまったような錯覚を覚えるほどで、それぞれのシーンに関わったすべての役者さん、特に子役の松本花奈さんの表情や仕種が本当に良かったです。

 両親の離婚、それに伴う弟との離別という、子どもにとっては痛ましい記憶なのですが、そのときほんの1ヶ月ばかりだけの付き合いだったけど、ヨーコとの出会いが、その後の薫を支えていたことを感じ、何となく清清しい気分になりました。

 原作を読みたくさせてくれる、良作です。

 主題曲が雰囲気良かったです。

●監督:根岸吉太郎 ●原作:長嶋有(小説「猛スピードで母は」より「サイドカーに犬」)