一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

佐賀のがばいばあちゃん

私的評価★★★★★★★☆☆☆

佐賀のがばいばあちゃん [DVD]

 (2006日本)

 戦後間もない広島。居酒屋で働く母親を恋しがり、毎晩ぐずりながら母の元を訪れる幼い明広は、佐賀の実家のばあちゃん(吉行和子さん)の家に引き取られることになった。超貧乏ではあったが、奇想天外で破天荒なアイディアと言動で周りを煙に巻きながら逞しく生きるばあちゃんとのふたり暮らしで、明広は真っ直ぐな少年として成長していく。


 大人になった明広(三宅裕司さん)が、ばあちゃんと暮らした佐賀の日々を回想するという設定の映画ですが、映画の始まりと終わりに登場する三宅さんのシーンは、ちょっと余計な演出という気がしました。現在の明広の状況が特に描かれているようなワケでもないので、必然性のない描写かなぁ、と感じたですが…。

 有名な島田洋七さんの自伝を自ら脚本を書いて映画化された作品です。実話ベースのせいか、あっさり目のばあちゃんとの別れが、けっこう寂しく感じました。実際の人と人との別離って、こんなモンだろうなというリアルさを感じたせいかな?

 少年時代のエピソードは、確かに泣いて笑って心温まるお話の連続でした。すぐ裏にきれいな小川が流れているという、ばあちゃんの住まいのロケーションがすばらしい。トトロの世界に通じるような田舎の住まいですね。

 しかし、まぁ…なんというか。明広が、ばあちゃんと過ごした佐賀の日々は、確かにすばらしいのですが、今さら帰れない遠い昔の話ですしねぇ…。今さら。今さら、貧しくとも清く正しく美しく、みたいな生き方が通用する時代ではありませんし、そういう意味では、すでにファンタジーと化しているお話ではあるのです。同じ時代を生きている人間が経験してきた、同じ日本人のお話であるにも関わらず、です。失われたこころの時代だから、内外で激しく賞賛されているとも言えるのでしょうが、何となく、居心地の悪さを感じてしまう自分は、素直さが足りないのでしょうか?

●監督:倉内均 ●脚本・原作:島田洋七(小説「佐賀のがばいばあちゃん」)