一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

仮面ライダー THE NEXT

私的評価★★★★★★★★☆☆

仮面ライダー THE NEXT [DVD]

 (2007日本)

 本郷猛(黄川田将也さん)と一文字隼人(高野八誠さん)がショッカーを裏切った前作から2年、本郷は高校の生物教師となったが、毎日教え子たちに舐められっ放しで、真面目さだけが取り得のダメ教師ぶりを晒していた。そのころ世間では、人気アイドル歌手のChiharuの曲に呪いの歌詞が録音されていて、CDを聴いていた人たちが顔面を無残に切り刻まれて惨殺されるという噂が広まっていた。本郷は教え子のひとりの菊間琴美(石田未来さん)がChiharuの親友であり、彼女がChiharuの身に何か重大なことが起きたのではないかと心配していることを知る。ふたりはChiharuの兄・風見志郎(加藤和樹さん)を訪ねるが、そこで待っていたのは、ショッカーの改造人間・チェーンソーリザードと6人の量産型ホッパーの襲撃だった…。


 一言。いろんな意味で、怖い!

 残酷なホラーテイストの殺戮描写があるせいでしょう、PG-12指定(脚本段階ではR-15指定)という設定の作品になっています。

 本作はのっけから「ChiharuのCDの呪い」という都市伝説ホラーみたいなシーンで始まります。原作の怪奇性を、Jホラー・ムービーのテイストで焼き直したような印象ですかねぇ。ChiharuのCDに憑いた、呪われた謎の殺戮者の演出は、まんま映画「リング」を髣髴とさせるものでしたし、このエピソードのその後の広げ方も終始ホラーのままで…。この点は、見る人によって賛否あるところかも知れませんが、まぁ、ホラー嫌いで元々ホラー映画を見ない自分にとっては、こういう演出もありかな、程度の感想で、特に問題はありません。ただ、本編ストーリーにこのホラー部分と、ショッカー対ライダーという2つの主要部分が螺旋のように絡まってくるので、実は一回見ただけでは細部の謎がうまく理解できず、消化不良を起こすような印象を否定できないのも事実です。

 いろんな意味で怖い…ホラー部分の説明できない怖さ、ショッカーの企みの理不尽な怖さ、これらの突出した怖さの陰に、実はもっと怖いエピソードが仕込まれていた気がします。普通の人間の怖さ、というのかな。最終的にライダーはショッカーと戦って、ショッカーの企みを打ち砕くことはできた、でも、Chiharuの呪いの原因を作った人間の浅ましい欲望は、どうなった? ネタバレすれすれ覚悟で書くなら、Chiharuの周りにいた人間の身勝手で浅ましい嫉妬心だとか、なりふり構わぬ金儲け主義だとか、ライダーが戦えない相手が劇中に登場していたのです。そう言えば、本郷猛は、学校では、生徒の前では、無力なダメ教師を演じるしかなかったですねぇ。これも人の怖さを表した、象徴的なエピソードなのかな? ま、なんにせよ、劇中で一番怖いと感じた登場人物は、嶋田久作さんですねぇ。ショッカーより、貞子より怖かった。演出的に田崎監督も狙ってたと思います。あと、斎藤洋介さん演じる事なかれ主義教師も、ある意味、具体的に身の周りにいそうな人物像なのが、リアルに怖いかも…こういう人の前では正義は曲がってしまいますからねぇ。

 さて、相変わらず劇中、どこにも『仮面ライダー』という表現は出てきませんが、もうそんな細かいことはどうでもよくなってきました。そんなことより、前作より数段パワーアップした数々のアクション・シーンに酔いしれ、ライダー・ワールドを堪能するしかありません。

 バイクによるアクション・シーンがかなり増え、数々のバイク・スタントとともに豪華なVFXでもバイクに乗ったまま、殴る・蹴る・叩き壊す、と、かなり見せ場を作ってくれています。ショッカーのアジトでの戦闘シーンもかなり熱く、「カメラ、凄いな!」と何度も口あんぐり!---ただ、この屋内の戦闘シーンは、ちょっと全体的に暗いので、リアルに地味な色のライダー&ショッカーのみなさんが、ときどき区別できないほどに入り混じって戦っていて、ちょっぴり苦しかったです。ま、アクションが激しいので、途中経過で誰がどこにいるのか分からなくてもいいのでしょうがね。

 音も凄いなぁ…アクションシーンのドッカンどっかん!も凄いし、ホラーシーンのビクッとくる後方からの音も凄いし、これはぜひ5.1chで観賞せねば、です。

 ところで、ディレクターズ・カット完全版とも言うべき、EXTENSION VersionがDVDに収録されてるんですが、長さで1分13秒しか違わないんですよねぇ。ということは、戦闘の後の、あのシーンが追加されただけなのかな? 劇場版で描かれていないのに、かなり思わせぶりで重要なエピソードだと思うんですが、続編THE THIRDは、このシーンを踏まえて続くのかな? だとすると、アンフェアな気もしますが…これ以上はネタバレなので自主規制します。続編があるかどうかも分からんし…。

 最後に。クレジットの後の最後のシーンは…狙いを理解するのが困難ですなぁ…。

●監督:田崎竜太 ●脚本:井上敏樹