一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

サウスバウンド

私的評価★★★★★★★☆☆☆

サウスバウンド スペシャル・エディション [DVD]

 (2007日本)

 元三里塚闘争の活動家の父・一郎(豊川悦司さん)と、同じく活動家で、裏切った仲間を刺した罪で半年間服役した過去を持つ母(天海祐希さん)。そんな二人を両親に持つ、洋子(北川景子さん)、二郎(田辺修斗さん)、桃子(松本梨菜さん)。主に二郎の視点から破天荒な父を中心とした家族の東京浅草→沖縄西表島での生活を描いたドラマ。


 と要約すると、なんだか怪しい雰囲気ですが、要はムチャクチャな理屈で公権力に立ち向かう父を、最後には子どもたちが「父ちゃん、すげぇ!」と思うようになる、そんな作品です。いや、二郎はもうちょっと冷静だったな。「先のことは分からないけど、今、このときは」という限定付きで、父を凄いと思ったのでした。そこがなんだか、リアルに感じるのだね。

 ここぞ、という場面で一郎は言う。「みんな、お父さんを見習うな。お父さんは極端だからな。でも、汚い大人になるのだけはやめてくれよ。違うと思ったらとことん闘え。負けてもいいから闘え。他人と違ってもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」と。

 ま、こんなオヤジだと、子どもも正直世間との折り合いを考えて、キツい思いをすることは多々あるだろうと思うのですが、それでもきっと、この一郎のセリフにはガツンとくると思うんですよ。お父さんは極端だと自分で分かっているけど、自分を卑下しているワケではなく、自分自身には自信満々な人間なワケですよ。その上で、「見習うな」と。だけど、「汚い大人になるのはやめてくれ」と言われれば、「そうだな」と。たとえそれまでの暮らしの中で、オヤジのことを煙たく思い、ときには「いなければいいのに」なんて思っていたとしても、納得してしまうよな。

 ま、行き着くとこまで行き着くと、元活動家の夫婦とその子どもたちがどうなってしまうのか、常識的世間に暮らす私たちはハラハラ気をもんでしまうワケですが、オチは大して問題ではないのかも知れません。舞台は沖縄に移ってしまっているし、エンディングは、大らかな気持ちで迎えましょう。

 …う〜ん、なんだか不思議な映画だ。こんな終わりでイイのか?と思った私は、公権力に逆らえない重症の常識人なんだろうなぁ…。

 原作がどうなのか読んでない私には分かりませんが、森田芳光という監督の描く家族って、一筋縄ではいかない感じがしますね。

●監督:森田芳光 ●原作:奥田英朗(小説「サウスバウンド」)