一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

転がれ!たま子

私的評価★★★★★★★★★★

転がれ!たま子 スペシャル・エディション [DVD]

 (2005日本)

 24歳で引きこもりがちの桜井たま子(山田麻衣子さん)は、美容室を営む堅実な母・タツコ(岸本加世子さん)と高校3年生の弟・大輔(松澤傑さん)との3人暮らし。父・鳥越平吉(竹中直人さん)は、たま子が幼い頃に家を飛び出し、近所でオブジェ作りに現を抜かしている。たま子はそんな父が大好きで、外出するとき、必ず父お手製の鉄カブトをかぶって出かけるのだった。そんなたま子の好物は、近所の日進月歩堂のおじいちゃん(ミッキー・カーチスさん)が焼く『甘食』。甘食さえ食べられれば幸せ…ところが、おじいちゃんが急に入院して、大好きな甘食が無くなってしまった!


 ずっとこのままでいたいのに…。

 堅実だった母も、大好きな父も、就職を控えた弟も、そして毎日部屋の隅っこに訪れていた猫のタマまでも、みんなたま子の元を離れ、それぞれの道を歩み始めてゆく。そして、生きがいとまで思っていた『甘食』が食べられなくなったとき、たま子の人生が、転がり始めた!


 ポップですっ飛んだ展開にビックリしながら、なんてストレートなメッセージなんだろうと感心してしまいました。人間誰しも「ずっとこのままでいたい」と、一度は思う時期があると思うのですが、生まれたからには必ず(究極的には『老い』や『死』といった)さまざまな変化を受け入れなければなりません。そんな変化を受け入れ、周囲と向き合ったとき、なぁんにも出来なかったたま子が、気づいたら「パンなら焼ける」子に成長していました。それは、ごくごく地道な日々の積み重ねの中で手に入れた、生きることの意味だったかも知れません。

 タツコとトラキチ与座嘉秋さん)の顔、特に目のアップが続くシーンに、ものすごい『チカラ』を感じました。ドキドキと高揚していくのが、自分でもハッキリと分かるほど、凄い画面でした。ずいぶん思い切った画を見せる監督さんだな、と。


 なんか見返すたびに、新たな発見がありそうで、ついつい続けて見てしまいました。

 とりあえず、たま子の山田麻衣子さんの演技は、なかなかギューッと胸に来る場面がいっぱいあって、それだけでも見応えありますよ。ちょっと甘いけど、満点。

●監督:新藤風