一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

カメラを止めるな!

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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カメラを止めるな!日本映画専門チャンネル公式サイトより引用)
カメラを止めるな! [Blu-ray]

 (2018日本)

 最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる―”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。

 とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!?大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。

 ”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。
日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)


 制作費300万円のインディーズ映画がSNSの口コミ効果で全国公開へと拡大し、国内353館で222万人を動員、2018年の邦画興行収入ランキング7位(31.2億円)ほか、海外でもアジア圏や英仏米などで公開され、国内外の映画賞を数々受賞したとかいう映画史に残る事件と言われた作品らしい。と、なんとなく聞いている、くらいで、劇場で見ようとまでは思わなかった天邪鬼なボクです。

 まぁ、SNSでバズるという、きわめて現代的な展開で思いもかけず持ち上げられてしまった作品でしょうね。たぶん、制作者サイドもここまでの成功を挙げられるほどの野心はお持ちではなかったかとは思いますが、うまく時代に乗っかったのだと思います。

 賛否両論あるのも分かる気がしますが、所詮、個人の好みの問題。面白さがまったく分からない、もちろん〝アリ〟でしょう。しかし、だからと言って、作品を小ばかにしたり、ましてや面白かったという人に対して『映画やドラマをろくに見ていない』とまで言い切るのは、まったく余計なお世話です。たかが2時間前後の娯楽の時間に対する、好き嫌いなんて極めて個人的な感想ですから、自由に吐き出させてほしいもんです。別に他人と感想が違ってても、ボク自身は気にしませんし、違う感想をお持ちの方のレビューも楽しく読ませていただいています。『あぁ、そんな見方、感じ方もあるんだな』てなカンジで、自分の心の糧になってると思いますけど。


 37分ワンシーン・ワンカットとありますが、映画のタイトルが出るまで40分は、たぶん他に例がないような気がします(もちろん、気がするだけで、知らないだけですwww)。
 実はそこから撮影開始までの20分ばかりの展開がものすごく退屈で、つまり映画が始まって約1時間を耐えないと、この作品の真の面白さ(仕掛け)を楽しめないことになってます。確かに、この構造では、否定的な感想が多々あっても不思議ではありません。『どんだけドMじゃなきゃ楽しめないんだ』と、ボクもその辺までは思ってました。しかも、ボクはソンビ映画が大嫌いときてるモンだから、なおさらの苦行でしたw

 しかし、そこから残りの37分ワンカット・ワンシーンの撮影現場の再現で、冒頭に見た37分の映像の違和感の理由が次々と明かされると、けっこう、あざとさも感じるところはあったものの、次第に観ていてテンションが上がってゆき、最後に『カット!』が入ったタイミングで、出演者と一緒に緊張が解けて自然と頬が緩み、微笑みながら、ふぅーっと大きく息を吐いてカタルシスを味わうという、不思議な共感を覚えたのでした。これ、自分が学生時代にラジオドラマ制作していたせいもあるかなぁ。何かしら作品作りにヲタク的なこだわりを持って取り組んだことがある方、もしくはその感覚を持ち合わせている方は、この映画に共感覚えやすいかも知れません。

 最後の親子の写真のくだり、それを手にしながら達成感で高揚する親子の笑顔のアップ、このシーンに出会えただけで、観た甲斐あったと感じました。何事も終わり良ければ~というところは、実際あるのですよね。写真の構図の意図、安っぽいかも知れないけど、ボクはこういうの好きだぁ。
 エンドクレジットで、本作品の〝真のメイキング〟映像が流れます。アイディアの勝利、でしょうねぇ。時間おいて、また観たくなる気がしましたね。

 はい、結論。ボクはこの映画、面白かったです。


●監督・脚本:上田慎一郎