一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

人生フルーツ

私的評価★★★★★★★★★★

映画「人生フルーツ」チラシ
 (2016日本)

 風が吹けば、枯葉が落ちる。
 枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
 土が肥えれば、果実が実る。
 こつこつ、ゆっくり。
 人生、フルーツ。

 愛知県春日井市高蔵寺ニュータウンの一隅。雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と50種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。刺繍や編み物から機織りまで、何でもこなす英子さん。ふたりは、たがいの名を「さん付け」で呼び合います。長年連れ添った夫婦の暮らしは、細やかな気遣いと工夫に満ちていました。そう、「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」とは、モダニズムの巨匠ル・コルビュジエの言葉です。
(映画「人生フルーツ」公式サイト「作品解説」より引用)

life-is-fruity.com


 2016年に東海テレビが制作したドキュメンタリー番組が、ミニシアターで公開されたもの。このエントリを書いてる時点で、国内正規版のメディア化はされていないようで、代わりに自主上映などの形で全国のミニシアターで再上映を繰り返されているようです。
 スカパー!の「日本映画専門チャンネル」が〝協力〟という形でクレジットされていて、今回は同チャンネルで放送していたものを録画して観ました。


 この映画を知るきっかけとなったのは、ネットで知り合ったある女性とのチャットで「好きな映画は?」という問いかけに、間髪入れず返ってきた答えからでした。
 「何それ? 知らんわ」
 「ミニシアターでしか見れない」
 てなやりとりのあと、上述のリンク先の公式サイトを見つけた次第です。
 その方は、田舎から地方の政令市に越してきたばかりで、自然を感じづらい都会暮らしが性に合わないと漏らしていました。
 話し方は、とてものんびり、ゆったり。たぶん、せかせか生きている方からすると、ややもすれば〝トロい〟と言われかねない穏やかさでした。
 確か30代の女性なのに、「虫が好き」、それも筋金入りと思えるほど「虫が周りにいる暮らしを愛している」^^;ように見受けられました。
 ボクもそこまでではないけれど、少年時代から多少昆虫に興味を持ってて、9年ばかり自然の中で仕事をしていたこともあったので、その辺の話は合いました。
 しかし、じきにネットに現れなくなり、縁がなくなってしまいました。田舎に戻って、この映画のようなスロウで幸せな日々を送っていればいいな、と思っています。


 あだしごとはさておき。

 90歳の津端修一さん(元建築家)と妻で87歳の英子さんの二人が、郊外のニュータウンの一角で、自然とともに暮らす生き様を撮ったドキュメンタリーです。
 まぁ、見れば〝となりのトトロ〟で描かれているようなスロウな暮らしを体現された、実に美しい生き方をされているご夫婦です。
 正直、ステキだな、と思う反面、無精者の自分にはムリだな、と思わせられる端正な暮らしぶりです。
 父が残したわずかばかりの庭木の手入れや下草刈りでさえ満足にできないし、コツコツやるよりズルして楽してたいと思う方だし、日々手をかけてやらないと成り立たないスロウライフは、憧れても絶対手を出しちゃいけない暮らしぶりだと自覚しています。
 ただ、津端さんたちの、日々の営みを楽しんでいる点というか、生活を楽しむ心持ちみたいなところは、見習いたいなと思いました。

 とりあえず、ステキなご夫婦だし、ステキな暮らしぶりだし、樹木希林さんのナレーションも心地よいし、見ていて「いいな」と思えるひと時を味わえる映画ではあります。素直に満点で。

●監督:伏原健之