赤い風船(Le Ballon Rouge)
私的評価★★★★★★★★☆☆
(1956フランス)
第29回(1956年)アカデミー賞・脚本賞受賞。第9回(1956年)カンヌ国際映画祭・短編パルム・ドール受賞。
少年のパスカル(パスカル・ラモリスさん)は、ある日学校に向かう途中、1個の赤い風船が街灯に引っかかっているのを見つけ、それを手に入れる。風船を持ったままバスに乗り込もうとして、車掌からそれではダメと言われたパスカルは、やむなく風船を手にしたまま、学校まで走っていく。学校の門番のおじさんに風船を預けたパスカルは、授業終了後、家まで風船を持ち帰るが、母親は風船を彼から取り上げて窓から外に放ってしまう。けれでも不思議なことに…。
(WOWOWの番組内容から引用)
わずか36分のファンタジー。
第二次大戦後10年ばかり経つも、まだまだくすんだ色のパリの街角を、ひと際色鮮やかで大きな大きな赤い風船が、ふわりふわりと駆け抜けてゆく。
一所懸命にパタパタと走る少年の動きが、とってもキュート。ホントにかわいい子犬みたい。
少年とたわむれる風船も、拾われた子犬みたいで、まるで二匹の子犬が楽しそうにじゃれ合っているよう^^
そう。まるで風船が生きていて、少年に懐いてどこまでも付いてくるように見える、とても不思議な映像なのです。
画面からは、操演のための補助ひものような線も見えませんし、そのくせちゃんとお店のショーウィンドウに映ったり、地面に影が落ちたりしているので、合成しているとしても、高度な技なのでは?と思ってしまいます。どうやって撮影しているんでしょうね?
とりあえず、撮影に使われた赤い風船は、透けないように、中に黄色い風船を入れて二重にしてあり、表面に周囲の風景が映るよう、ニスを塗って光沢を出していることだけは分かっているようですが、あとは謎です。
演出的には、セリフを最低限に抑え、BGMとSEと周りの状況と、あとはパスカル少年の表情を観ているだけで、字幕なしでもストーリーが理解できるほど、優しい仕上げになっています。
最後は、どうなっちゃうんだろうな?
追いかけてた子どもたちは、見上げていたのかしら?
だとしたら、どんな顔をして、見上げていたんでしょうね?
リアルなパリの街を舞台にした、おとぎ話の絵本を読んだような心持ちです。
ポッと、心の中に小さな灯りがともったような、幸福感に包まれます。
●監督・脚本:Albert Lamorisse アルベール・ラモリス