一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

サヨナラまでの30分

私的評価★★★★★★★★★★

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映画『サヨナラまでの30分』公式サイトより引用

 (2020日本)


「お前だけなんだよ、俺が見えてんの。
 お願い、ちょっと体貸して。」


 メジャーデビューを目前に解散したバンド「ECHOLL」。
 1年後のある日、突然大学生の颯太(北村匠海さん)が現れ、 メンバーのヤマケン(葉山奨之さん)、重田(上杉柊平さん)、森(清原 翔さん)の日常にずかずか踏み込み再結成を迫る。
 誰をも魅了する歌声を持ち、強引だがどこか憎めない颯太に、少しずつ心を動かされていくメンバーたち。
 実は颯太の中身は、1年前に死んだボーカルのアキ(新田真剣佑さん)だった!
 偶然拾ったアキのカセットテープを颯太が再生する30分だけ、2人は入れ替わる事ができ、1つの体を共有していく。
 人づきあいが苦手で、はじめはアキを毛嫌いしていた颯太。
 「俺にこじ開けられない扉はない」が口癖のポジティブなアキ。
 30分ごとの入れ替わりを何度も繰り返す、正反対の2人の共同生活がスタート。
 ひとりで音楽を作っていた颯太も、次第にアキや仲間と音楽を奏でる楽しさを知る。
 アキも颯太の体を使ってバンドを復活させ、音楽のある生活を取り戻したが、「ECHOLL」を去った恋人・カナ(久保田紗友さん)だけは戻ってこない。
 カナに再び音楽を始めてもらうため、最高の1曲を作り上げようとする2人。
 そんな日々の中で颯太もカナに心惹かれていき、カナもどこかアキの面影を感じる颯太に、心を開き始める。
 すべてがうまくいくように見えたが、ふとした事から颯太=アキなのではないかとカナは気が付いてしまう。
 一方カセットテープに異変がおき、アキと颯太の入れ替われる時間は短くなっていく——。
(映画『サヨナラまでの30分』公式サイト「STORY」より引用)

sayonara-30min.com



 またご都合主義的でファンタジーな設定で好き勝手な世界観のストーリーを作り上げてんだろう、なんて予断を持って臨んだら、見事に予想を覆す出来の映画でした。

 〝カセットテープ〟のアナログな仕組みを見事に設定に織り込んでおり、たぶん、若いころにカセットテープで音楽を聴きまくっていた世代にとっては、すごく納得感の高いストーリーになっていると思います。そして、アナログなカセットテープだからこそ、〝記録〟を上書きしても〝記憶〟が重層化されるように、実はすべてが消え去るワケじゃないことがキモ。そのことを知れば、この物語がより一層おいしくいただけるはずです。

 映像の見せ方もすばらしいです。
 カセットテープを再生している間は、颯太が二人画面に登場するワケですが、アキに乗っ取られた自分を見ている颯太がいるおかげで、意外と混乱を来たすことなく安心して見てられました。ストーリーが進むにつれて、カセットが再生されている間、停止している間にアキと颯太が登場する場面のセリフがほとんどミュートされ、主に二人の表情を見ることになりますが、これがまたうまい。次第に複雑な思いが募っていく二人の表情だけで見せる演出は、秀逸です。
 またカメラアングルや光と影の使い方などにも工夫が見られ、画面全体に広がる長野の美しい映像にもトキメキます。

 そして、バンド映画ですから、何より音楽がカッコいい。
 フェスの演奏の熱量もかなり高いですが、練習で奏でる〝stand by me〟などの楽曲もドキドキするほどカッコよくて、計6曲のオリジナル楽曲がストーリーをうまく盛り上げてくれます。

 正直、圧倒されました。すばらしい青春音楽映画です。
 ヴォーカルの二人は、自分で歌ってるのかな?



●監督:萩原健太郎 ●脚本:大島里美