一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

影裏

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

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映画『影裏』公式サイトより引用

 (2020日本)

親友が、突然姿を消した


 今野秋一(綾野剛さん)は、会社の転勤をきっかけに移り住んだ岩手・盛岡で、同じ年の同僚、日浅典博(松田龍平さん)と出会う。慣れない地でただ一人、日浅に心を許していく今野。二人で酒を酌み交わし、二人で釣りをし、たわいもないことで笑う…まるで遅れてやってきたかのような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。

 夜釣りに出かけたある晩、些細なことで雰囲気が悪くなった二人。流木の焚火に照らされた日浅は、「知った気になるなよ。人を見る時はな、その裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」と今野を見つめたまま言う。突然の態度の変化に戸惑う今野は、朝まで飲もうと言う日浅の誘いを断り帰宅。しかしそれが、今野が日浅と会った最後の日となるのだった—。

 数か月後、今野は会社帰りに同僚の西山(筒井真理子さん)に呼び止められる。西山は日浅が行方不明、もしかしたら死んでしまったかもしれないと話し始める。そして、日浅に金を貸してもいることを明かした。日浅の足跡を辿りはじめた今野は、日浅の父親・征吾(國村隼さん)に会い「捜索願を出すべき」と進言するも、「息子とは縁を切った。捜索願は出さない」と素っ気なく返される。さらに日浅の兄・馨(安田顕さん)からは「あんな奴、どこでも生きていける」と突き放されてしまう。

 そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔だった。
 陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”はどこにあるのか—。
(映画『影裏』公式サイト「STORY」より引用)

eiri-movie.com



 ネタバレ、あります。




 色の濃い映画だったなぁ。

 コントラスト強めで、ベタッて色が潰れてて、なおかつ全体的にグリーンが強めなため、肌の色が不健康な印象。

 せっかくの自然の中の風景も、ちょっと不自然な緑の発色に思えて、残念でした。



 全体の構成、胸騒ぎを催させる不穏なトーンのBGMの使い方など、妙にサスペンスじみてて、ちょっとストーリーの本筋を見誤らせてる気がしました。

 そのため、何か事件が起きるのでは?と疑心暗鬼のまま、最後まで観進めてしまうと、拍子抜けで足を掬われることになり、変な映画を観ちまった、みたいな感想になりかねないと思いました。


 一方で、冒頭から今野が寝汗まみれのまま、やけに色めき立つパンイチの姿を晒すなど、妙にあざとくエロいシーンを見せ付けるなぁ、なんて思ってたら、やはり性的なイメージを印象付ける伏線だったか、と後で気づいて、ちょっとイヤ〜な気分になってしまいました。

 とは言え、そこは、ボクが青臭いだけなんですけどねぇ。




 「知った気になるなよ。人を見る時はな、その裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」ってセリフ、前後の出来事との繋がりがよく分からなかったなぁ。

 些細なことって、なんであの流れで今野が不機嫌な感じになったのか、ちょっと読み取れなかったですし、言い方はともかく、しごく当たり前のことを唐突にドヤ顔で言われても、みたいな気にもなりました。

 また、そもそも人が隠そうとしてるところを、わざわざ見ようとしないで、スルーしちゃいけないのかなぁ?

 たぶん、ココが感じ方が分かれるところだと思うんだけど、ボクは、あまり人のすべてを知りたいとは思わないし、知らずに付き合えるなら、それでイイと思っちゃう方なので、『なんか日浅のセリフ、重いなぁ』としか感じられませんでした。

 どういうのか、ちょっとチカラ入り過ぎてる気がして、腑に落ちないくだりと感じましたねぇ。




 あと、行方不明と分かってから、日浅のことをいろいろ知ることになるワケだが、思ったほど日浅の影の顔に対する印象が残ってないんだけど、なんかそんなに影で人に言いにくいこと、してたのかなぁ?

 借金を返済する間もなく行方不明になったことと、学歴詐称くらい?

 今野も言ってたけど、それほどのことをした?って思ったのが、父親が勘当する理由聞いてたら、少なくとも『合格通知くらい確認してなかったのか?』と思ったからなんですよね。

 それ以前から騙され続けてたとか、映画の中だけじゃ分からんし、なんか変な親子関係ですよ。





 今野、日浅の気持ちに寄り添って、感じることがある人には、良い作品と思えるかもしれませんねぇ。

 ですが、ボクにはどうにも、このストーリーの中から、二人の関係性に〝深い絆〟のようなモノを感じとれなかったので、なんとも消化不良な印象しか残らなかったのです。


 終わり方も、なんか感動的なイメージ挟み込んで泣かせてやろうみたいな〝あざとさ〟を覚えて、心が凍りついたまま観終えてしまいました。


 評価低くてゴメンなさい。

 ボクの感受性の低さ故です。

 いや、急にいなくなって捜索願を出そうかと思えるほどの人間関係を持ち合わせていない、引きこもり性分のせいですね。



●監督:大友啓史 ●脚本:櫻井香織 ●原作:沼田真佑(小説『影裏』「第157回芥川賞」/文春文庫刊)