一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

大誘拐 RAINBOW KIDS

私的評価★★★★★★★★★☆

大誘拐 RAINBOW KIDS [DVD]

 (1991日本)

それは八十二歳のメルヘンから始まった。身代金100億円を巡るキミョーな五十日間。

 紀州一の大富豪にして山林王のおばあちゃん(北林谷榮さん)が、三人組の若者に誘拐される。ところがおばあちゃん自らが、身代金の金額を百億円につり上げるよう犯人を説得。いつのまにか犯人グループを手玉に取り、事件を影で操り始める。そうとは知らない警察と家族は救出に全力をあげるが、息詰まる駆け引きは遂に身代金受け渡しのTV中継という前代未聞の事態へと発展していく……。
 軽快なテンポと計算された演出、久々の岡本タッチが冴える作品であり、驚天動地のコメディとそれを支えるサスペンスが話題となり大ヒットを記録した。
(DVDパッケージより引用)



 冒頭の刑務所出所のくだりから、妙に引き込まれる展開。さすがの岡本喜八さん。すばらしい。


 人気ミステリとして名高い原作の角川文庫版は、高校生くらいに一度は手にしたことはあったんですが、やけに分厚い本で、なかなか読めずにそのまま本棚の肥やしになったままではないかと^^;
 その本を手に入れてから実に、10年近くの年月が経ち、映画化されたことも知っていましたが、劇場に足を運ぶこともないままでした。
 その映画がDVD化されて購入したのがさらに15年後くらいの2004年末、ところがこれも見よう見ようと思いながら、結局観たのがさらに16年ばかり経った、今^^;
 結局、出会ってから40年くらい経って、やっと中身を知ったという、なんともなぁ~なお話は、他人にはどうでもイイことですね。


 原作、面白いんだろうなぁ。

 浅はかな誘拐犯を手玉に取って事件を自ら演出し、警察やマスコミを思いのままに振り回す、刀自の奇想天外な計略が、凄すぎます。
 もう、不可能犯罪だろ。絶対ボロ出して、捕まるだろ。そこで捕まったら、刀自もタダで済まんだろ。
 そう思いながら観てたら、見事に予想を裏切る展開の連続で、井狩率いる和歌山県警ともども、してやられた気分に。
 いや、真逆。実に、痛快www
 刀自の頭の回転の速さには、舌を巻きますね。
 紀州一の大富豪&山林王は伊達じゃありません。
 数字に強く、論理的思考に長けた刀自の才覚あればこそであること、明白です。

 ハラハラドキドキの誘拐事件の顛末を堪能したあとは、事件の落としどころですが、これも実に人情味あふれた解決で、ステキです。




 もう、30年前に撮影された作品なんで、リアルタイムで観ていた俳優さんたちの多くが、すでに鬼籍に入られております。

  • 岡本喜八さん(2005年2月、81歳没)/監督
  • 橋本功さん(2000年2月、58歳没)/鎌田(和歌山県刑事部捜査一課長)
  • 天本英世さん(2003年3月、77歳没)/串田(柳川家の使用人)
  • 中谷一郎さん(2004年4月、73歳没)/テレビ和歌山社長
  • 藤木悠さん(2005年12月、74歳没)/ラジオ和歌山社長
  • 緒形拳さん(2008年10月、71歳没)/井狩大五郎(和歌山県警本部長)
  • 奥村公延さん(2009年12月、79歳没)/安西(柳川家の使用人)
  • 北林谷榮さん(2010年4月、98歳没)/柳川とし子(刀自)
  • 神山繁さん(2017年1月、87歳没)/柳川国二郎(長男)
  • 常田富士男さん(2018年7月、81歳没)/古参(和歌山県警)
  • 樹木希林さん(2018年9月、75歳没)/中村くら

 さまざまな作品で楽しませていただき、ありがとうございます。謹んで、心よりご冥福をお祈りいたします。


●監督・脚本:岡本喜八 ●音楽:佐藤 勝 ●原作:天藤 真(小説『大誘拐』/角川文庫刊)