一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

罪の声

私的評価★★★★★★★★☆☆

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映画『罪の声』公式サイトより引用

 (2020日本)

翻弄される運命。救うべきもの。本当の“罪”とは――
いま明かされる、かつて日本中を震撼させた
未解決事件の真相!


 35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。

 大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬さん)は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野 源さん)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。

 「俺の声だ―」

 それは、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった!
 やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。
 「正義」とは何か?「罪」とは何か?
 事件の深淵に潜む真実を追う新聞記者の阿久津と、脅迫テープに声を使用され、知らないうちに事件に関わってしまった俊也を含む3人の子どもたち。
 昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる ――

(映画『罪の声』公式サイト「物語」より引用)
tsuminokoe.jp


 主役の星野源さん、あんまりドラマで観たくないんだよなぁ、正直なところ^^;
 歌声は好きなんだけど、セリフしゃべるとき、特に荒らげるときの声の響きがあんまり好きじゃない、というか苦手な声質なのです。不思議ですね。あれだけ歌声だとステキに感じるのに。
 もう一人の主役?の小栗旬さんは、声だけ聴くと、けっこう悪声なんですよねぇ。『天気の子』の須賀圭介役、クレジット見るまで、若いころの火野正平さんかと思ってましたモン^^;


 ま、俳優の個人的な好みはさておき。


 その大小にかかわらず罪を犯したら、きちんと償わない限り、罪の意識は心のどこかに澱のように溜まってしまうものなのでしょう。
 時効を迎えても、きっと自分の心が許してくれない。
 だから、時効を過ぎて、事件から35年も経った今だからこそ、吐き出して楽になりたい心理も働くのでしょう。

 しかし、幼いころに、善悪の意識もなく大人たちに指示されて行ったことのせいで、35年も経った今になって、改めて罪の意識を植え付けられてしまうこともある、そんな映画です。

 自分は、誰に指示されて声を録ったのか?
 自分に近しい大人の中に、罪を犯した者がいるのではないのか?


 もし、自分が曽根俊也と同じ立場だったら――
 やはり、テープのことをすっきり忘れて日々の暮らしに埋没する、なんてことはできそうもありません。
 ずっと心の重しになって、気づいたら陰鬱な顔をしてしまいがちな日々を送りそうです。
 そして、同じように声を使われた二人の少年少女のことも、気になってしまうに違いありません。

 そして事件の真相は、その二人の少年少女にもスポットが当てられます。
 曽根は親から受け継いだテーラーを営むことで、それなりの幸せな人生を送ってきました。
 残りの二人は、どうだったのでしょうか?


 未解決事件の真相、真の首謀者が誰だったかは、この映画の主眼じゃありません。
 真相が導き出す残酷な事実から、やるせないけれども受け入れるしかない真実を知ること。
 〝業〟と言うのか、生きていくためには、不合理であってもやってしまうことがあること。
 そして、やってしまったことを、後悔すること。
 さらに、後悔し続けた場所から、力は弱くとも、立ち直ろうとすること。


 ボクにも、今さら言えない、いくつかの小さな罪の意識が心の澱となっています。
 死ぬまでに、すべてを清算して、真っ白な心で往生したいけれど、相手がもはやこの世にいないので……。
 やってしまったことは取り消せないから、例え償い、赦されていたとしても、いつまでも心のどこかに引っかかったまま、ずるずると引きずってしまうんだろうなぁ。いや、全然犯罪ではないんだけれども、不義理というか、そんなカンジでして。



 泣ける要素はないかと思ったけど、シチュエーション的に年老いた母親と息子というのは、どうしても自分自身を画面に投影してしまい、個人的に泣けて仕方ないところです。
 さらに、あざとくも、声を聴かせるなんて、ずる過ぎます。
 泣くしかないじゃないか;;


 とにもかくにも、見応えたっぷりの映画でした。

●監督:土井裕泰 ●脚本:野木亜紀子 ●原作:塩田武士(小説『罪の声』/講談社文庫)