一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

たぶん

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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映画『たぶん』公式サイトより引用

 (2020日本)

当たり前が当たり前じゃなくなった今
誰もが経験する<新しい時代の、新しい選択>
『たぶん』が描くのは
曖昧な言葉の中にある確かな気持ち。

【ササノとカノン】
大きな物音で目覚めるカノン(小野莉奈さん)。別れたササノ(木原瑠生さん)が部屋を整理しに帰ってきていた。同棲を始めた時、「私たちは変わらない」そう思っていたのに些細なことで少しずつ"ズレ"を感じ、別れを選んだ二人。大学はオンライン授業になり、就職活動を控える中、将来を真剣に考えるカノンと楽観的なササノ。どうしてこうなったの?悪いのは彼なのか、私なのか。たぶん......。

【川野と江口】
サッカー部の川野(寄川歌太さん)とマネージャーの江口(吉田美月喜さん)はビデオ通話をしていた。今頃、最後の大会を迎えているはずだったが、今年は自粛により中止に。努力が報われないまま、憂鬱な受験の話をしていた。通話を切ると川野のLINEにチームメイトから江口が東京へ引っ越すと知らされる。3年間チームと自分を支えてくれていた江口のことを思い、気づくと川野は自転車で走り出していたー。

【クロとナリ】
インテリアデザイナーのナリ(めがねさん)は彼氏のクロ(糸川耀士郎さん)となかなか連絡が取れず、直接家を訪ねる。インターホンを押すとクロが出迎えるも、玄関にはヒールの靴が。アリサ(黒澤はるかさん)と名乗る女性は編集の仕事をするクロの元同僚。オススメのDVDを届けに来たという。クロのことが大好きなナリは動揺を隠せずその場で言い合いになってしまう。こんなにも好きなのに......。

(映画『たぶん』公式サイト「STORY」より引用)
monogatary.com


 ついに、新型コロナウイルス感染症の広がりによる、さまざまな〝自粛〟の影響下の人々を描く映画が劇場にかかるようになったか、という感慨を覚えた。

 マスクの着用、不要不急の外出自粛、テレワーク、大学の対面授業の休止とオンライン授業の開始、高校生のサッカー大会の中止、不況による親の家業の廃業……普通じゃなくなった日常で募るストレス、あぶり出されるむき出しの感情。


 一番気になったカップルは、クロとナリの二人。
 外出自粛で2週間ぶりに彼氏の家を訪ねる。もうその時点で彼女の感情はマックスに高ぶってた、はず。
 そこに先客のヒールが…マジで気まずい場面。
 本当にDVDを届けに来ただけの元同僚なのか?
 自粛で会えないと言っておきながら、実はその女性と逢瀬を重ねていたのではないのか?
 不安から感情を爆発させてしまうナリ。
 クロとの時間が大事だから、今の仕事を辞めてもいいとまで言い出す。
 昭和のオヤジなら、渡りに船で、当たり前のように家庭に入って主婦になることを望むところだろうなぁ、なんて思った。
 令和の男子(クロ)は、男性に依存するように傾倒してくる女子(ナリ)に、自立して対等な関係となることを望んでいたんだろうな。
 この二人、一歩進んで新しい関係性を築いていくんじゃないかな?

 他2組のカップルのお話も、新しい時代の、新しい生活様式の中で生まれた、新しい男女の関係性を描いた小編。
 たぶん、平和な時には曖昧でもなんとなく流せた言葉や関係が、こんなにも雁字搦めで窮屈な暮らしの中では、些細なことからでも突き詰めて考えてしまうようになるんだろうな、なんて思った。だけど、それが決して悪いことじゃなくって、むしろ前向きに捉え、新たな一歩を踏み出すきっかけになる、そんなポジティブでコンティニュアスなエンディングを匂わせているところが、好きだな。

 今のウィズ・コロナの生活様式は、まだまだしばらく続くだろうと思うけど、この映画を観て、不自由な暮らしを強いられても打ちひしがれず、前向きに生きていけそうだと思った。甘っちょろいかな?


●監督:Yuki Saito ●脚本:岸本鮎佳 ●原案:しなの ●主題歌:YOASOBI