タイトル、拒絶
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2020日本)
それぞれ事情を抱えながらも力強く生きるセックスワーカーの女たちを描いた群像劇。劇団「□字ック」主宰の山田佳奈が、2013年初演の同名舞台を自らのメガホンで映画化した。
雑居ビルにあるデリヘルの事務所で、華美な化粧と香水の匂いをさせながらしゃべる女たち。デリヘル嬢たちの世話係をするカノウ(伊藤沙莉さん)は、様々な文句を突きつけてくる彼女たちへの対応に右往左往している。やがて、店で一番人気のマヒル(恒松祐里さん)が仕事を終えて戻って来る。何があっても楽しそうに笑う彼女がいると、部屋の空気は一変する。ある日、モデルのような体型の若い女が入店したことをきっかけに、店内での人間関係やそれぞれの人生背景が崩れはじめる。
2019年・第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品され、主演の伊藤沙莉が東京ジェムストーン賞を受賞した。
(映画.com『タイトル、拒絶』作品情報「解説」より引用)
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lifeuntitled.info
なんか、いろいろとふだん見せちゃいけないって思ってるようなモノどもが、剥き出しのまま晒されてて、すごく心がささくれ立ってしまった。いや、自分の中の常識のタガを外されて、ココロが行き場を失って、不安定に澱みの中を漂ってるカンジ、の方がしっくりくるかな?
勝手な妄想で申し訳なかんべ。
マヒルの喋り方を聞いていて、『くちびるに歌を』で父親に2度も捨てられたなずな(恒松祐里さん)の10年後の姿がマヒルのような気がしてきて、なんだかやるせない気持ちになったのよ。
なんかさ。つらい思いを無理やり心の奥に押し込めて、楽しくもないのに楽しそうな振りしてカラ元気振り撒いてるカンジが、2つのキャラの間で繋がってる気がしたのね。切ないわぁ……。
〝セックスワーカー〟って言葉の意味を〝性行為することで稼いでいる人〟って狭い意味で解釈してたんだけど、広く〝性風俗産業で稼ぐ人〟って感じなのかな?
この映画から受けた〝デリヘル嬢〟というお仕事に対するイメージを硬ぁ~く書き下すと、事務所に登録している個人事業主の女性たちが、顧客の発注に応じて派遣され、何らかの行為をした見返りに一定の代金をいただいて事務所に持ち帰り、事務所から経費を差っ引かれて報酬を頂戴する仕事、そんなカンジでしょうか?
乱暴な言い方すると、男どもに搾取される女たち。
登場するデリヘル嬢たちは、決して好きでやってるワケでもなく、楽しいから続けてるでもない、むしろ、イヤ~な顧客の悪口を教えあって溜飲を下げるのが関の山といった風にしか見えず、何かしらの明るい希望のようなモノが全く感じられません。
毎日毎日、ココロとカラダを擦り減らして働いてるだけ。
アレ?
本質的に、今のボクと、どこが違うの?
う~ん。そこかなぁ?
性風俗産業という〝なりわい〟に対する偏見、偽善者ぶって「そんなん、持ってません」とは言えない小心者のボクです^^;
けれども、その偏見と言うフィルター取っ払ったら、構造的にはボクらもデリヘル嬢と一緒じゃないん?
歩合は違えど、組織に上前撥ねられて報酬もらって生活してる。
顧客の理不尽なクレームに耐え、どこ向いて仕事してるのか分からん上司の命令に意欲を削がれ、デキルやつの足は引っ張って蹴落としてやりたい。嫉妬と諦観。しまいにはアレコレ考えるのにも疲れ果て、ただただ日々の暮らしを維持せんがためにだけ働いている。
夢や希望? 言わないだけで、ないワケでもないでぇ。ただ、実現の道筋が、見えてないんよ。それ、持って無いんと一緒かぁ^^;
うん、ボクの人生にも、タイトルなんて要りません。リタイア後に自分史作って本にして、タイトルに意味込める人の気が知れんわ^^;
てなカンジ、使われる身であれば、大差ないんと違うかなぁ?
そっかぁ。
この映画は、ボクの映画でもあるんじゃないんかなぁ?
いや、大声で喚き散らしたり、力任せに殴り倒したりして、本音を爆発させられている分だけ、今のボクより、健全なのかも……てか、羨ましかったりする……。
ホンマ。シアワセって何だろなぁ?
そんなギモンにコタエを見つけ出せずに、日々もがくように生きている。
カノウが号泣してるの見てて、自分もなんだかワケも分からず大声で泣きたくなっちまったよ。
マヒルの妹(モトーラ世理奈さん)、どうなったのかな?
それだけが、気がかりでした。
ヘンなレビューですんまそん。
でも、衝撃は受けました。
ボクも案外しぶとく、サバイブしてきました(苦)
●監督・脚本:山田佳奈