一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

水上のフライト

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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映画『水上のフライト』公式サイトより引用

 (2020日本)

交通事故で歩けなくなった遥。
心を閉ざした彼女が出会ったのは、パラカヌーという夢-。

 自分の実力に絶対の自信を持つ高慢な遥(中条あやみさん)は、走高跳で世界を目指し、有望スポーツ選手として活躍していた。だがある日、不慮の事故に合い、命は助かったものの二度と歩くことができなくなってしまう。将来の夢を絶たれた遥は、心を閉ざし自暴自棄になるが、周囲の人々に支えられパラカヌーという新たな夢を見つける―。きらめく水面を背景に、母の愛、淡い恋心、恩師との約束・・・そして、大切な人の想いを乗せて、どん底から道を切り開いていく。

(映画『水上のフライト』公式サイト「STORY」より引用)
suijo-movie.jp


 中条あやみさんは、たぶん、すっご~っく、何度も沈しまくったことでしょうね^^;


 劇場で何度も繰り返し予告編を観て、主題歌の唄い出しと『ばかじゃない!』ってセリフだけが脳に刷り込まれてて、なんかほとんど観た気分になってたけど、ある意味、予告編以上でも以下でもない、期待を裏切らないド真ん中直球的ストーリーでしたね。


 オリンピック出場が期待された走高跳の選手・遥が、交通事故の後遺障害で競技を断念せざるを得ない絶望的な状況に陥ったところから、パラカヌー挑戦を決意し、実行するに至るまで――文字にしちゃうとたった数行のハナシになっちゃうけど、人が絶望から立ち直るまでって、とても簡単なことじゃないから、その辺りをある程度観る側に納得感を与えて描くのは、なかなか脚本的にも演出的にも難しいと思うんです。

 現に、ふさぎ込んで部屋で過ごすだけの遥を母親が『気分転換になるから』とカヌー教室に連れ出すあたりは、「それ、全然早すぎるでしょ! そんなん、無理やりすぎるでしょ!」って、内心でいっぱいツッコミ入れてたような次第ですが、この場所からのストーリーの動き方が、実に見事でしたね。

 カヌー教室の恩師・宮本(小澤征悦さん)との再会を始め、教室に通う子どもたち、義肢装具士の颯太(杉野遥亮さん)など、いろんな人々との出会いが、あざとくも、さり気なく^^;仕込まれてて、『確かに人は誰かと助け合いながら生きてるんだなぁ』ということを再確認させられます。

 遥を含め周囲の人々の反応や感情の揺らぎを丁寧に描いているので、いわゆる〝感動の押し売り〟みたいなイヤな感じは全くなかったのが良かったです。むしろ、合宿のたき火のシーンは、遥の気持ちがすんなりと腑に落ちてくる素晴らしい演出で、中条さんの素晴らしい演技とともに、この映画のハイライトだと思いました。


 人は、いつ自分自身が障がい者になるか、分かりません。
 もし障がいを持つことになったとして、それが若ければ若いほど、絶望感は深いのだろうと思います。
 一時は、死にたくなるほどつらい思いをすることもあるかも知れません。
 ボク自身は、障がいを持つ方が常に周囲にいる環境で幼少期から育っては来ましたが、最も身近な家族が障がいを持つに至るまで、さほど深く関わることもありませんでした。しかし、介助をしながら共に生活をするようになると、身内以外の障がい者の方に対しても、ある程度積極的に、ホスピタリティの視点でもって、関りを持つように変わりました。

 この映画に登場する人たちで、遥に直接関わる人たちは、屈託なく彼女と接します。
 障がいの有無に関わらず、そんな気持ちで周りと助け合い、付き合っていければ、もう少し生きやすさを覚える世の中になるのでしょうにね。


※良くも悪くもトレーラーどおりの作品。

11/13公開 映画『水上のフライト』予告編(60秒)

※車椅子に乗った主人公たち。
vgaia.hatenadiary.org
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●監督:兼重 淳 ●脚本:土橋章宏、兼重 淳