臨場 劇場版
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2012日本)
横山秀夫の原作を内野聖陽主演で映像化した人気TVドラマの劇場版。無差別通り魔殺人事件の関係者が立て続けに殺される。型破りな検視官は2つの事件をつなぐ謎に挑む。
東京・吉祥寺で連続通り魔殺人事件が発生し、死者4人を出す惨事になった。だが犯人の波多野(柄本 佑さん)は精神鑑定で心神喪失と診断され、裁判では“刑法第39条”によって無罪が言い渡される。2年後、港区と横浜市で波多野を無罪にした弁護士と精神科医が殺される事件が発生する。検視官の倉石(内野聖陽さん)は双方の状況に類似点を発見し、同一犯の可能性を指摘。警視庁と神奈川県警で合同捜査が行なわれるが、倉石は被害者の死亡推定時刻に疑問を抱く。
(WOWOWの番組内容から引用)
冒頭、雨の中をトボトボと歩む倉石が、不意に地面に倒れ落ちる。
雨の中、両腕を突き上げ、両の手を天に振りかざすも、やがて力尽きたように大の字になって雨に打たれる。
画面が白くなり、タイトル。
実に思わせぶりなプロローグの行方は、エピローグに続く……。
とにかく。全編通して、重い。
主人公の検視官の倉石は、明らかに不治の病を抱えながら臨場している。
いつ倒れても不思議じゃない感じだが、周囲には隠し通しているらしい。
連続通り魔殺人事件の犯人の狂気染みた殺戮劇は、たとえ描写はマイルドでも、トラウマ級だ。
「死にたくない…まだ死にたくない」と言いながら息絶える母親。
止めるように声を張り上げて呼びかけたがために、命を失った少女。
犯人は、刑法第39条の適用により無罪となり、精神病院に入院措置を受けただけで生き延びている。
もし、彼の精神鑑定が偽装されていて、彼が責任能力を有しながら連続殺人を犯していたのなら……。
娘を殺害された母親は、娘の死に囚われて、犯人を憎むばかりで、前に進むことを放棄してしまっている。
冤罪で息子を失った元刑事。
犯罪者の父の汚名を着たまま、交番で周りの厳しい目に自らを晒し、自分を責め続けながら、警邏を続けている。
精神鑑定結果を都合よく捻じ曲げる医者と弁護士。
彼らが連続して殺害されると、私怨を抱く者として、娘を殺害された母親と息子を冤罪で失った警察官が捜査線上に載せられる。
倉石の検視により、医者と弁護士の死には共通して死亡推定時刻を偽装した疑いが持たれた。
それにより、事件は思いもよらぬ被疑者を浮かび上がらせるが……。
なんだか。誰も救われないような、不条理をにじませる映画だなぁ。
人は、何のために生まれ、何のために生きてゆくのか?
どうせなら、日々笑って過ごしたいだけなのに。