一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

さんかく窓の外側は夜

私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆

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映画『さんかく窓の外側は夜』公式サイトより引用

 (2021日本)
 
冷川・三角、心霊探偵バディの元に持ち込まれた、連続殺人事件の謎。
死者が遺した謎のメッセージに隠された、驚きの真実とは―?


  書店で働く三角康介(志尊淳さん)は、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。
 ある日、書店に除霊師・冷川理人(岡田将生さん)が現れる。「僕といれば怖くなくなりますよ」の一言で、三角は冷川と共に除霊作業の仕事をすることに。
 そんな中、二人は刑事・半澤(滝藤賢一さん)から、一年前に起きた未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられる。調査を進める冷川と三角は、やがて自殺した犯人の霊と出会う。冷川が三角に触れると、犯行時の状況がフラッシュバックのように浮かび上がり、恨みがましい犯人の声が響く――

「ヒ ウ ラ エ リ カ に . . . . だ ま さ れ た . . . .」

 犯人の霊を通して視た情報を元に、真相へと近づいていくふたりの前に現れたのは、呪いを操る女子高生・非浦英莉可(平手友梨奈さん)。

 〈ヒウラエリカ〉とは何者なのか? 連続殺人事件との関係は――?
 死者からのメッセージの謎を解き明かそうとする二人は、やがて自身の運命をも左右する、驚愕の真実にたどり着く…。

(映画『さんかく窓の外側は夜』公式サイト「STORY」より引用)
movies.shochiku.co.jp


 う~む。なんか、いろいろと惜しい。
 宣材見ると、岡田将生さんと志尊淳さんのBLモノか、はたまた『新三角ミステリーエンターテインメント!』というキャプションから平手友梨奈さんを含めた三角関係モノか、とか思いましたが、そっちの色はまったくと言ってイイほどありませんでした。

 どういうのか、虚仮威し(こけおどし)とまで言っちゃうと失礼かもしれないけど、半分まで観て一瞬腕時計を見てしまったほどストーリーに驚くべき謎が無かったし、極めてパーソナルな心の内側の諸々だけに全てが収斂して完結してしまい、観終えた後、なんだか置いてけぼりを食らったような印象だったのです。
 映画館で初めてポスター見たときには、なんか凄い期待しちゃったんだけどなぁ……。


 半澤刑事が三角に「(冷川のペースに)呑まれるなよ」と言うセリフがあるけど、これは観覧者にも言えることかと。
 冒頭から三角が交差点を渡ろうとすると、まぁ、なんと言うことでしょう。そこには見えるはずのない霊が……の前に、「なんで、どいつもこいつも喪服みたいに黒々しい服装着こんで外出してんのんや!」って脳内でツッコミ入れました。
 「そうか、もう冒頭から、視覚的にダークな雰囲気を刷り込もうとしてんのな」って、すでにもう、ある意味〝呪い〟にかけられてるワケです。一瞬にして、素直に鑑賞できなくなってしまう〝ATフィールド〟みたいなんが、ボクの外側に出来てしまったんですね。
 えぇ、ある意味のっけから〝呑まれて〟る気がします。
 うん、そうね。
 この映画の雰囲気に呑まれるか、どうなのか。それによって、ハマれるか、醒めてしまうか。


 三角「霊より人間の方が怖い」
 半澤「当たり前だ」
みたいなくだりもありましたっけ?

 呪いで人の死を自由に操る――呪殺なんて日本の法律は想定してないから、半澤刑事にとっては不能犯のやらかした事件でしかない。
 そうなんだよ。
 霊障が起こすホラーより、ある意味タチが悪い。

 霊がたたるホラーなら、原因が取り除かれて現象が終わればおしまいです。
 しかし、呪いで人が殺せる能力を、善悪について無自覚なまま行使しまくった結果、現に大勢の人が亡くなっていても、法的に罰せられるという、現実社会の裁きが望めないワケで……そいつが極悪な人物として描かれ、いかにもこんなヤツなら死んで終わっても仕方ない、と観る者に思わせてしまえば、そういう天罰的な解決も、あるっちゃあるんかな、とは思いつつ、それじゃあダーティーハリーが私刑で事件解決するのと本質的に変わらんし、いずれにしても、個人的にはスッキリと納得できる解決がないような気がして仕方なかったんですね。

 そもそも、こういう作品って、善悪を語っちゃあ、イケないんかな?
 映画だからって、ボク自身が生きているこの世界のルールと違う解決方法で、なんとなく消化不良気味でも、有耶無耶のまま結論を飲みこまざるをえないような、この手の世界観のオハナシは、正直観ていてしんどいです。

 「そんなことしたら、バチが当たるんじゃないん?」て思っても……あぁ、最後の思わせぶりな映像は、もしかして、あれはあれでバチが当たったことになるんかな? でも、他のヤツは?


 こんな事件、本来なら半澤の出番はねぇぜってなモンなんだけど……半澤は『オカルト的なことは一切信じない』という性分から、『呪いよってマインドコントロールされない』って一点だけで、このおかしなハナシの外側でデコを回す役を担っている……というか、こちら側の世界に生きている彼・半澤刑事の存在だけが、この物語の唯一の救いだと思いました。あくまで個人の感想です^^;


 平手友梨奈さんは……本作では期待外れだったかな。
 そもそも主役じゃないし、出番が少ないのは仕方ないとしても、演出が良くないのか、出演シーンの中身がブツ切りみたいで、もっとしっかり演技しているところを観たかったなぁ、と思いました。
 できれば次は、〝クセが強くて毒のあるキャラ〟じゃない役柄での演技を観てみたいな、と、勝手に思ってますが、『ファブル』が上映延期になっちゃったからなぁ。

 あとね。エンドロール観てて驚いたんだけど、筒井道隆さん出てた!
 劇中、すっかり顔つき変わって見えて、クレジット見るまで気づかなかったよ。「妙に印象に残る顔だけど、誰かなぁ」くらいにしか思ってなかったのに、まさか知ってる俳優さんだったと分かったときの驚きたるや……^^;


●監督:森ガキ侑大 ●脚本:相沢友子 ●原作:ヤマシタトモコ(コミック『さんかく窓の外側は夜』/リブレ刊)