一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

あの頃。

私的評価★★★★★★★★★★

f:id:vgaia:20210224214522j:plain
映画『あの頃。』公式サイトより引用

 (2021日本)
 
いろいろあったけど、人生のなかで今が一番楽しいです。
でもときどき思い出します。みんなと過ごしたあの頃を――

 バイトに明け暮れ、好きで始めたはずのバンド活動もままならず、楽しいことなどなにひとつなく、うだつの上がらない日々を送っていた劔(つるぎ/松坂桃李さん)。そんな様子を心配した友人・佐伯(木口健太さん)から「これ見て元気出しや」とDVDを渡される。何気なく再生すると、そこに映し出されたのは「♡桃色片想い♡」を歌って踊るアイドル・松浦亜弥の姿だった。思わず画面に釘付けになり、テレビのボリュームを上げる劔。弾けるような笑顔、くるくると変わる表情や可愛らしいダンス…圧倒的なアイドルとしての輝きに、自然と涙が溢れてくる。
 すぐさま家を飛び出し向かったCDショップで、ハロー!プロジェクトに彩られたコーナーを劔が物色していると、店員のナカウチ(芹澤興人さん)が声を掛けてきた。ナカウチに手渡されたイベント告知のチラシが、劔の人生を大きく変えていく――。

 ライブホール「白鯨」で行われているイベントに参加した劔。そこでハロプロの魅力やそれぞれの推しメンを語っていたのは、プライドが高くてひねくれ者のコズミン(仲野太賀さん)、石川梨華推しでリーダー格のロビ(山中 崇さん)、痛車や自分でヲタグッズを制作する西野(若葉竜也さん)、ハロプロ全般を推しているイトウ(コカドケンタロウさん/ロッチ)、そして、CDショップ店員で劔に声を掛けてくれたナカウチら個性豊かな「ハロプロあべの支部」の面々たち。劔がイベントチラシのお礼をナカウチに伝えていると、「お兄さん、あやや推しちゃう?」とロビが声を掛けてくる。その場の流れでイベントの打ち上げに参加することになった劔は、ハロプロを愛してやまない彼らとの親睦を深め、仲間に加わることに――。
 夜な夜なイトウの部屋に集まっては、ライブDVDを鑑賞したり、自分たちの推しについて語り合ったり、ハロプロの啓蒙活動という名目で大学の学園祭に参加するなど、ハロプロに全てを捧げていく。西野の知り合いで、藤本美貴推しのアール(大下ヒロトさん)も加わり、劔たちはノリで“恋愛研究会。”というバンドを組む。「白鯨」でのトークイベントで、全員お揃いのキャップとT シャツ姿でモーニング娘。の「恋ING」を大熱唱。彼らは遅れてきた青春の日々を謳歌していた。
 ハロプロ愛に溢れたメンバーとのくだらなくも愛おしい時間がずっと続くと思っていたが、それぞれの人生の中で少しずつハロプロとおなじくらい大切なものを見つけていく。そして、別々の人生を歩みはじめ、次第に離ればなれに――。

(映画『あの頃。』公式サイト「STORY」より引用)
phantom-film.com


 劔樹人さんのコミックエッセイが原作で、原作者ご本人が大阪・阿倍野ハロヲタ仲間と過ごした〝あの頃。〟の実話を基にした作品とのことです。
 ちなみに奥様はエッセイストの犬山紙子さんなんですね。ご夫妻そろって熱烈なハロヲタって、うらやましいです。



 〝恋愛研究会。〟メンバーが全員、役がハマり過ぎてて、めっちゃテンション上がってしまったのは、ボクもハロヲタの端くれだからでしょうか^^;

 中でも大好きな仲野太賀さん演じるコズミンがサイコーでした。仲野さんは、相変わらず役を選ばないなぁ、という印象。どんな役でも入り込んでて、迷いを感じさせないところが好きです。
 今回もけっこう恥ずいけど憎み切れないキャラの青年を、見事に振り切って演じてましたね。

 てゆーか、主演、仲野さんだったんじゃね?と思うほど、最後の方はガッツリと物語の中心に居座ってましたね。

 ラスト、いろんな感情が込み上げてきて、ぶわっと泣けてきちゃいましたモン( ;∀;)



 さて。一応、遅れて来たとは言え、ハロヲタの端くれと自認しているワケです。この映画に不満のあろうハズがありません^^;
 しかしながら、遅れて来たボクは、〝あの頃。〟の思い出がさっぱり無いんですよねぇ。実は〝あの頃。〟は、ただの一般人でしかなかった(いや、AV機器とか特撮モノとかが好きという面では、すでにヲタの端くれではあった)のです^^;

 ですが、対象は何であれ、ヲタであることは、一つのシアワセのカタチだとは思ってて、本作の中のセリフにもありましたが、『いろいろあったけど、人生のなかで今が一番楽しいです。』って、いろいろ突き詰めてきた経験がある人だからこそ吐けるセリフじゃないかな、と思いました。

 ボクもハロヲタになって、ずいぶんと「今が一番楽しいです」って言える時間を過ごさせてもらったけど、そんな時代を経て今、コロナ禍でいろんな行動が抑制されている時でも、「今が一番楽しいです」と言えるくらいに前向きな気持ちを保っていられるのは、ハローにのめり込んだ時期があったからこそだと思っています。
 だから、また再び、現場ではじけられる日が来ることを信じてます。


 監督の今泉力哉さんの作品、そんなにたくさん観てるワケでもないんで、近視眼的な見方だとは思うんですけど、恋愛映画を撮っていながら、『単純に愛し合う二人が結ばれてハッピーエンド、めでたしめでたし』な作品は無いのかな?と思っています。

 どう言うのかな。
 彼の作中の登場人物は、ちょっとワケありな感じで、一方的に思いを寄せているため、微妙に物語が終わらない感じ=日常の一コマを切り取ったような映画なので、エンドクレジット以降も物語が続いている印象なのですね。あぁ、主人公はこの先もいろいろな困難にぶつかりながら、思いを遂げるのか、あるいは届かぬことを悟っても〝片思い〟を続けるのか、みたいなことを想像させるワケです。

 それって、結局〝片思い〟=〝個の中で抑えても抑えても湧き上がって仕方のない感情〟=〝純粋な好きの気持ち〟を描きたいのかな、と。

 そうなんですよ。〝好き〟って気持ち、よくよく考えてみたら、理屈で説明しづらいことないですか? なんで好きになってしまうのか? なんで成就しないと分かれば余計に〝好き〟の気持ちが募るのか? そんなん言ゅうても、誰にも〝好き〟の気持ちは止められないっつーか、自分でも制御不能な感情でしょ? たとえ他人から見たら『クソくだらねーことに熱あげちまって、バカじゃね?』みたいに思われたとしても、どうしようもないんだよね。

 今泉さんは、その〝好き〟という純粋な気持ちを、さまざまなカタチで描いて見せてくれる監督さんなんだと思うんです。

 ハロメンに〝好き〟の気持ちを惜しげもなくぶつけるヲタのみなさんを主人公に据えた本作は、やはり純粋に〝好き〟な気持ちを描く今泉監督にとって、格好のテーマだったのかも知れませんね。



 山﨑夢羽(やまざき ゆはね/BEYOOOOONDS)さんが演じた松浦亜弥さんが、何度見てもご本人かと見紛うばかりの完コピ度で、思わず声をあげそうになってしまいました。

 調べたら、冒頭で劔がDVDを見てハロプロに興味を持つきっかけとなった松浦亜弥さんの〝♡桃色片思い♡〟は2002年2月のリリースで、同年11月生まれの夢羽さんはまだ生まれてなかったんですね。ハロプロは誕生して既に20年以上になるワケで、冷静に考えれば今在籍しているメンバーの多くが〝あの頃。〟の時代に生まれていないんです。

 で、過去にモーニング娘。のオーディションを受けたことのあるお母さんから松浦亜弥さんの楽曲をしばしば聴かされて育った夢羽さんが、松浦亜弥さんのファンであったであろうことは想像に難くないワケで、そんな彼女が今回、松浦亜弥さん本人役で映画に出演するなんて、もうこの一点だけでも、ハロプロメンバーとファンが紡ぐ一大叙事詩を見せていただいたようで、感慨ひとしお雨あられ!ありがとうございます!なのですよね^^;

 きっと、そんな感じで、ハロプロハロヲタの歴史は続いて行くんだな、と確信しました。〝娘。〟の娘たちがハロプロで活躍する日も、そう遠くないことでしょう。それって、とってもワクワクです。



 そして今、コロナ禍でなかなか現場に出向く勇気を持てないオヂサンにとっては、少し衰えかけていたハロヲタ魂を再び燃え上がらせてくれる大切な作品となりました。
 できれば手元に置いて何度も繰り返し観たいので、Blu-ray出たら、絶対買います。

 それにしても。
 早く現場に出てって、オイオイ叫びたいよねぇ……ο(*´˘`*)ο



ミキティ藤本美貴さん)カバーの〝恋ING〟張っておきます。泣ける;;

【恋ING】映画「あの頃。」の主題歌歌ってみた【藤本美貴】


今泉力哉さん監督作品の中でも、いろんな〝好き〟のカタチがあるな、と気づかされた作品
vgaia.hatenadiary.org


●監督:今泉力哉 ●脚本:冨永昌敬 ●音楽:長谷川白紙 ●原作:劔樹人(コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』/イースト・プレス刊)